埼玉県川口市 違法な所持品検査で鑑定書の証拠能力が認められず無罪 

2018-08-15

埼玉県川口市 違法な所持品検査で鑑定書の証拠能力が認められず無罪 

埼玉県川口市に住むAさんは夜道を歩いていたところ,埼玉県川口警察署の警察官から職務質問を受け,ポケット等の中身を出すよう言われました。
しかし,Aさんがそれを拒否したことから,警察官は「触るぞ」と2回ほど言って,右ポケットの外側から中にあったたばこの箱を下からつかんで押し上げ,意図的に落下させました。
そして,たばこ箱の中からパケに入った白色製粉末が見つかり,検査の結果,陽性だったことから,Aさんは覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕されました。
接見に行った弁護士は違法な所持品検査として無罪を主張することとしました。
(平成18年6月29日 大阪地方裁判所判決を基に作成)

~ 所持品検査 ~

所持品検査相手方の承諾を得て行われるのが原則です。
ただ,承諾がなければ一切所持品検査が認められないかとえばそうではなく,捜索に至らない程度の行為,たとえば承諾なくポケットの外側からポケットに触れる行為,承諾なく開かれたバックの中身を見る行為などは許容されるとするのが判例です。
もちろん,捜索に類する行為(所持品検査)は,令状がない(法の令状主義に反する)ことから違法です。

事例のもととなった裁判では,事例のような警察官の行為があったかどうかがまず問題となりました。
裁判所は,警察官がポケットの内容物を押し出す意図で,下からつかみ触る行為があった疑いが残るとした上で,この行為は所持品検査として承諾なく許される着衣外部からの接触を装って,ポケットの内容物を取り出すのと同じ効果を狙ったものといえ,(略)実質的にポケットに手を差し入れる行為と変わるところはなく,捜索に類する行為であって,所持品検査の限界を越え,違法と判断しました。

~ 違法な所持品検査の効果 ~

違法な捜査によって得られた証拠と密接に関連する証拠は,違法収集証拠として証拠能力が否定される可能性が高いです。
本件でいえば,違法な捜査によって得られた証拠とは「白色製粉末」であり,それと密接に関連する証拠とは白色製粉末が覚せい剤であることを示す「鑑定書」ということになります。
通常,両者は密接に関連していると考えられ,実際の裁判でも鑑定書は違法収集証拠として証拠能力が否定されました。
そして,裁判所としては,その白色製粉末が覚せい剤だということを示す証拠が他にないことから,犯罪の証明がないとして無罪としたのです。

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