裁判の種類
(1)通常の公判手続の流れ
①人定質問
被告人本人であるかを確認するための手続です。氏名、生年月日、本籍地、住所、職業などが裁判官から尋ねられます。
②起訴状朗読
検察官が起訴状を読み上げます。
③黙秘権告知
裁判官から、被告人には黙秘権(言いたくないことは言わなくてよい権利)があること、および公判廷で供述したことは証拠となり有利にも不利にも働く可能性があることが告げられます。
④罪状認否
裁判官から被告人に対して、起訴状の内容に間違いがないか尋ねられます。
また、裁判官が弁護人に対しても起訴状の内容についての意見を求めます。
⑤検察官による冒頭陳述
検察官が、証拠によって証明しようとする事実について、簡潔にまとめて明らかにします。
⑥検察官による証拠調べ請求
検察官が冒頭陳述で述べた事実を証明するための証拠を裁判所に取り調べるように求めます。
⑦証拠に対する意見
裁判官が弁護人に対して、検察官が証拠調べ請求した証拠について裁判で使用することに同意するかどうかを尋ねます。
ただし、弁護人はあくまで被告人の代理人として意見を述べる為、被告人本人の意思に反する同意不同意はできません。
⑧証拠決定・証拠調べの実施
裁判官が証拠調べ請求された証拠を、裁判で採用するかどうかの決定をし、決定した証拠を取り調べます。
⑨弁護人による冒頭陳述
弁護人も検察官同様冒頭陳述を行います。もっとも、公判前整理手続に付されていない事件では、弁護人が冒頭陳述を行うか否かは任意です。
⑩弁護人による証拠調べ請求
弁護人からの証拠を取り調べるように裁判所に求めます。
⑪証拠に対する意見
裁判官から検察官に対し、弁護人の請求証拠を裁判で使用することに同意するか否かを尋ねます。
⑫証拠決定・証拠調べの実施
裁判官が証拠調べ請求された証拠を、裁判で採用するかどうかの決定をし、決定した証拠を取り調べます。
⑬証人尋問・被告人質問
証人や被告人に対して検察官、弁護人、裁判官がそれぞれ質問します。
⑭論告・求刑
検察官は、改めて事件に関する意見を述べます(論告)。刑の重さに関する意見を特に「求刑」と呼びます。
⑮最終弁論
弁護人が事件に関する最終的な意見を述べます(弁論)。
⑯意見陳述
被告人が最後に事件に関して一言程度述べます。
⑰判決言渡し
裁判官が主文(量刑)や判決理由を言い渡します。
(2)即決裁判手続
即決裁判手続とは、「争いのある事件とない事件を区別し、捜査・公判手続の合理化・効率化を図る」ため、争いのない明白かつ軽微な事件について、迅速かつ簡易に審理および判決を行うことを目的として導入された簡略化・迅速化された公判手続のことをいいます。
ア 要件
- 事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれるなど、即決裁判手続で審理するのが相当と認められる事件であること(刑事訴訟法350条の2第1項本文)。
- 死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪でないこと(刑事訴訟法350条の2第1項但書)
- 被疑者の書面による同意があること(刑事訴訟法350条の2第2項、3項)。
- 弁護人が書面による同意又は意見を留保していること(刑事訴訟法350条の2第4項、5項)。
以上の要件を満たす場合に、 検察官は、起訴状を裁判所に提出する際に、即決裁判手続の申立てをすることができます。
申立のあった事件について、公判期日において被告人自らが有罪であると述べ、裁判所が相当と認めた場合には、裁判所は即決裁判手続で審判する旨の決定を行います。
イ 特徴
即決裁判手続に付された事件については、できる限り即日判決の言渡しをするものとされており(刑事訴訟法350条の13)、懲役や禁錮の言渡しの場合には刑の全部の執行猶予が言い渡されます(刑事訴訟法350条の14)。
また、被告人の出頭義務が緩和され、検察官の冒頭陳述も省略され、証拠調べの方式も適当と認める方法で行うことができるなど手続きが簡略化されています(刑事訴訟法350条の10)。
しかし、証拠とすることに異議を述べない限り伝聞法則が適用されなかったり(刑事訴訟法350条の12)、事実誤認を理由とする控訴・上告ができなかったりする(刑事訴訟法403条の2、413条の2)というデメリットもあります。
(3)略式手続
略式手続とは、簡易裁判所の管轄に属する事件(罰金刑以下に処する罪、選択刑として罰金刑が定められている罪、横領や盗品譲受等の罪など)について、検察官が、被疑者にあらかじめ書面で異議のないことを確認した上で、簡易裁判所へ略式請求の申し立てを行い、公開の裁判手続きを経ることなく、100万円以下の罰金または科料の裁判(略式命令)を言い渡す手続です(刑事訴訟法461条、461条の2)。
略式手続は、被疑者にとって早期の事件終結・身体拘束からの解放というメリットがありますが、検察官が提出した証拠のみにより事実認定されてしまうというデメリットがあります。
また、略式命令の告知後14日以内であれば、仮に罰金を納付した後であっても、正式裁判の請求をすることができます(刑事訴訟法465条1項)。
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