MDMAと少年

2019-10-03

MDMAと少年

埼玉県秩父市の高校に通うA君(16歳)は、友人のB君から「これを飲むと楽しい気分になるし、勉強の集中力も上がる。」と言われ、錠剤を数錠もらいました。A君は、「人から薬を勧められるなんて、きっと怪しいものに違いない」と思い、B君に「これ何?」と聞きましたが、B君から詳しい答えは返ってきませんでした。そこで、A君はB君に「遠慮しとくよ。」と言いましたが、B君から「友達じゃないか。」「おれのほかにもみんな使ってるから飲んでみなよ。」などと言われ、「長年のB君やその友人らとの縁を切るわけにはいかない。」「仲間外れにされるのが怖い。」と思い、自宅に帰って錠剤2粒を服用しました。その翌朝、A君は気がつくと埼玉県秩父警察署にいました。昨晩、A君は自宅で突然暴れだし、両親から通報を受けた警察官により保護されたようです。A君の部屋からはMDMA3錠が押収され、A君は、麻薬及び向精神薬取締法違反(麻薬所持)で事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)

~ MDMAは恐ろしい薬 ~

MDMAとは、正式名称をメチレンジオキシメタンフェタミンという合成麻薬のことで、別名「エクスタシー」「罰(バツ)」「タマ」とも呼ばれています。
MDMAの服用により、覚せい剤に似たような興奮作用を覚えるほか、幻覚、不安、不眠、脳・神経の破壊、心臓・腎臓・肝臓の機能不全、記憶障害等を引き起こすと言われています。
厚生労働省のポスターには、

・小さい人間がいっぱいやってきて、剣で自分を刺し殺そうとする。
・路上で暴れ、病院につれていかれた。入院すると「暑い、暑い」と全裸になり、1ヶ月の興奮状態がつづき、「バカヤロー、部屋から出せ」と大声でわめき散らして食事を床に投げつけたり、医者などになぐりかかり、「自分は鬼になっている」と妄想に取りつかれてしまった。
・「MDMAを飲んだら眠れなくなってしまった。頭が回転しなくなり、気分が落ち込んでしまって、学校の先生の話が1割も頭に入らなくなってしまった。もう6ヶ月もたつのに一向に元に戻らない。つらくて仕方がない。死んだ方がましだ。」

などの使用者の体験談が掲載されています。
まずは、こうした声も参考に、薬物、MDMAの恐ろしさを実感することが大切です。
もちろん、MDMAを「所持」すること、「使用(施用)」することは麻薬及び向精神薬取締法という法律により禁止され、「所持」については

7年以下の懲役

または、営利目的で所持した場合は、

1年以上10年以下の懲役、又は1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金

という罰則が設けられています。

~ 少年と薬物事件 ~

もっとも、少年の場合、ただちにこれらの罰則が科されるのは通常考え難いです。
少年の場合、捜査機関に発覚すると、

発覚→逮捕(されない場合あり)→捜査機関での捜査→家庭裁判所送致→調査→少年審判

という流れに乗ります。
薬物事件の場合、事案の重大性からほぼ家庭裁判所に送致されると考えた方がよろしいかと思います。
ただし、「調査」の過程で、少年審判を開くまでもないと判断された場合は「不開始決定」を受けることが考えられますし、少年院送致保護観察などの保護処分を受けさせるまでもないと判断された場合は「不処分決定」を受けることも考えられます。
少年院送致を受けた場合は少年院へ収容されることになり、保護観察を受けた場合は社会復帰は許されるものの、一定期間、保護観察所の監督の下で更生していくことになります。

薬物に手を染めてしまう少年については、その少年自身に問題があることはもちろん、その少年を取り巻く環境にも問題があることが多いと思われます。
そのため、「調査」では家庭環境、学校、友人関係などでの問題点を明らかにし、そこで現れた問題点を解決するべく、少年を取り巻く環境を整備していく必要があります。
その過程で、少年に更生の兆しがみえ、環境が整い、少年が再非行を犯すおそれがないと認められる場合は少年にとってよりよい結果を得られることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。