薬物別―向精神薬
1 薬効など
向精神薬は、中枢神経系に作用して、精神機能に影響を及ぼす物質で、その薬理作用によって鎮静剤系と興奮剤系に大別されます。
向精神薬はほとんどが医薬品として流通していますが、不正な輸出入、製造、譲渡、譲渡目的の所持は「麻薬及び向精神薬取締法」により規制されています。
その他にも「麻薬特例法」による規制もあります。
2 法定刑と裁判の種類
(1)輸入・輸出・製造・製剤
ア 営利目的がない場合
法定刑は5年以下の懲役です。
通常の公判手続に付されます。
イ 営利目的がある場合
法定刑は7年以下の懲役で、情状により200万円以下の罰金が併科されます。
通常の公判手続に付されます。
(2)譲渡・譲渡目的所持
ア 営利目的がない場合
法定刑は3年以下の懲役です。
通常の公判手続に付されます。
イ 営利目的がある場合
法定刑は5年以下の懲役で、情状により100万円以下の罰金が併科されます。
通常の公判手続に付されます。
3 弁護活動
・無罪の主張
麻薬及び向精神薬取締法違反の事件では、たとえば中身を知らされず運ばされた場合のように、違法な物とは知らずに行った行為で検挙されることが考えられます。
しかし、違法性の認識については、それが規制されているという認識までは要求されず、違法な物かも知れないという程度の認識で足りるとされているため、知らなかったという主張はなかなか通りません。
ですが、全く知らずにうちに、麻薬の受け渡しや輸入などに利用されていたという場合には、物自体を所持していたこと自体の認識がなかったわけですから、十分に争う余地があります。
弁護士は、違法薬物との認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。
また、仮に麻薬及び向精神薬取締法違反事件を起こしてしまっていたとしても、それが捜査機関による違法な捜査によって発覚したものであれば、その違法性ゆえに不起訴処分や無罪判決を得られる可能性があります。
ですから、職務質問、所持品検査、採尿・採血、捜索、差押え、逮捕、勾留、取調べなど各捜査段階において、重大な違法行為がなかったか・それによって重要な証拠である覚せい剤・麻薬が収集されたのではないかという点を徹底的に調査して不起訴処分や無罪判決の獲得を目指します。
・環境整備・再犯防止
麻薬及び向精神薬取締法違反事件をはじめとする薬物犯罪事件は、被害者なき犯罪と呼ばれます。
ですから、被害者との示談等を検討することはできません。
薬物事犯においてもっとも重要なのは、ご本人自身が心から反省し、二度と薬物に手を染めないということです。
薬物依存は、一度常用しますと抜け出すのは容易ではありません。
再犯率が非常に高いのもこの種の犯罪の特徴です。
薬物による依存は、自分一人の力だけでは、なかなか克服することは困難です。
ですから、専門の医療機関や、薬物依存からの回復・更生をサポートする施設などの利用をすることも重要です。
また、薬物に関わる者との関係を断ち切り、ご家族などの監視により、二度と薬物に関わらせないという環境づくりも大切です。
薬物依存は、そこから抜け出すことは容易ではないですし、裁判官もそのことは十分理解しています。
ですから、減刑や執行猶予付き判決の獲得には周りの協力を得られる環境づくりが十分にできていることを裁判で示すことが重要です。
・早期の身柄解放
麻薬及び向精神薬取締法違反事件で逮捕・勾留されてしまった場合でも、事案に応じて釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行います。
薬物事犯では、身柄を開放することによって、その期間に再度麻薬等に手を出すのではないか、ということが非常に危惧されています。
また、薬物犯罪は被害者のいない密行性の高い犯罪ですから、共犯者との口裏合わせなどによる証拠隠滅の可能性も高いと判断されがちです。
このように、麻薬及び向精神薬取締法違反事件で逮捕・勾留されると、長期間身体拘束を受ける可能性が高く、保釈も認められにくいのが現状です。
しかし、そのような場合でも、証拠隠滅の恐れがないことや逃亡の恐れがないことを示す事情を示すとともに、場合によっては、一刻も早い治療のために早期に身柄を開放する必要があるとの主張をすることで、釈放・保釈の判断がなされることもあります。
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