危険ドラッグの輸入・密輸
危険ドラッグの輸入・密輸
1 危険ドラッグ輸入・密輸の規制法令
いわゆる危険ドラッグの輸入・密輸を規制する法律としては、関税法と薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が挙げられます。
【薬機法】
第七十六条の四
指定薬物は、疾病の診断、治療又は予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの(以下この条及び次条において「医療等の用途」という。)以外の用途に供するために製造し、輸入し、販売し、授与し、所持し、購入し、若しくは譲り受け、又は医療等の用途以外の用途に使用してはならない。
第八十三条の九
第七十六条の四の規定に違反して、業として、指定薬物を製造し、輸入し、販売し、若しくは授与した者又は指定薬物を所持した者(販売又は授与の目的で貯蔵し、又は陳列した者に限る。)は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第八十四条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
二十八 第七十六条の四の規定に違反した者(前条に該当する者を除く。)
【関税法】
第六十九条の十一
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
一の二 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第十五項(定義)に規定する指定薬物(同法第七十六条の四(製造等の禁止)に規定する医療等の用途に供するために輸入するものを除く。)
第百九条
第六十九条の十一第一項第一号から第六号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
薬機法第76条の4の「指定薬物」は、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という。)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に規定する大麻、覚醒剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に規定する覚醒剤、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に規定する麻薬及び向精神薬並びにあへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に規定するあへん及びけしがらを除く。)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいうと定義されています(薬機法2条15項)。
2 具体的規制行為
薬機法及び関税法では、指定薬物の輸入が規制の対象となっています。具体的な輸入行為としては、海外で購入した「ラッシュ」などの規制薬物を日本に持ち込もうとしたところ、税関検査で発覚したというケースなどが考えられます。自分自身で外国から持ち帰る場合も、インターネットの通販サイトで購入して国際郵便で日本国内に送ってもらう場合も輸入に当たります。税関で止められた場合には、薬機法の「輸入」は既遂となりますが、関税法の「輸入」は未遂となります。
3 争点
輸入・密輸事件に関わっていない又は知らされていなかったという犯人性や共謀の否認の他に、輸入行為はしてしまったものの規制薬物と知らなかったなど故意を争うケースもあります。
薬機法及び関税法の罪は故意がなければ成立しません。故意があるといえるには、具体的に指定薬物を輸入したという認識が必要です。薬物を輸入したことさえ知らなかった場合の他、「指定薬物として規制されていないからサイトで販売していると思った」等の違法な薬物ではないと信じた事情がある方は、故意の有無が問題になります。故意における薬物の認識は、一般常識的なもので足りると考えられており、身体に有害で違法な薬物を含むものであると思っていた場合には、法律上、故意があるとされます。
4 処分見通し
身体拘束については、逮捕された上で、20日間勾留される可能性が高くなります。薬物事件の場合利害関係者が多く、捜査の長期化が予想されるからです。
最終的な刑の判断は、規制薬物の輸入が成立する場合、薬物の量や輸入目的のいかん、常習性などが考慮されて判断がなされます。輸入した薬物の量が多い場合や業務として輸入行為を行っていたと認められる場合には、実刑判決を受ける可能性が高くなります。
早期に弁護士を弁護人として選任し、適切な取調対応アドバイスを受け、身体解放活動を行うことで、不起訴や無罪に向けた否認の主張が認められる可能性を高めたり、釈放・保釈の可能性を高めることができます。また、容疑者・犯人本人が指定薬物輸入行為による自身の罪を認めている自白事件でも、薬物輸入事件に精通した弁護士をつけることで、釈放・保釈の可能性を高めながら、略式罰金、執行猶予付き判決及び減刑に向けた活動をしていくことができます。