覚せい剤所持で実刑回避
覚せい剤所持で実刑回避について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。
~ケース~
埼玉県本庄市在住の会社員のAさんは,覚せい剤のパケをポケットに鞄にいれて繁華街を飲み歩いていた。
Aさんはかなり酔っており,それを見かけた埼玉県児玉警察署の警察官Xらから職務質問を受けた。
Aさんは酔っていたが普通に対応していたが,警察官から鞄の中を見せて欲しいと言われ,覚せい剤がばれると思い拒否した。
不審に思ったXらはAさんから鞄を奪い鞄の中を確認したところ,覚せい剤のパケが見つかった。
Aさんは覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の疑いで現行犯逮捕された。
その後の検査によりAさんが覚せい剤を使用していたことも判明した。
Aさんの家族はAさんが実刑とならないように弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談した。
(フィクションです)
~職務質問~
警察官による職務質問は警察官職務執行法第2条に基づいてなされます。
警察官職務執行法第2条
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
お酒を飲んでかなり酔っているという場合には警察官は異常な挙動があるとして職務質問をすることが許されます。
なお,職務質問の際に所持品検査をすることは条文上に規定はありませんが、判例によって,職務質問に付随して所持品検査をすることが認められています。
ただし,職務質問は任意捜査ですので有形力の行使は原則として許されていません。
有形力の行使があった場合には,犯罪の予防という目的との兼ね合いで適法であったかどうかが判断されることになります。
~実刑回避~
日本において,警察で事件を終局させるような軽微な事件を除いて,事件は警察から検察官へと送致されます。
検察官は送致された事件について起訴するか不起訴とするかを判断します。
不起訴には起訴猶予,嫌疑なし,嫌疑不十分などの種類があります。
検察統計によると日本における覚せい剤取締法違反の起訴率は概ね80%前後となっています。
起訴されなかった20%の大部分は被疑者が覚せい剤取締り法違反ではない場合や違法な捜査などによる嫌疑なしや嫌疑不十分による不起訴であると思われます。
そのため,覚せい剤取締法違反について起訴猶予による不起訴処分となることは非常に稀だと思われます。
今回のケースでは,警察官Xらによる鞄の中の確認によって覚せい剤を発見し覚せい剤取締法違反として逮捕しています。
仮にXらによる鞄の中の確認が法律上認められていない違法な捜査であると検察官が判断すれば嫌疑不十分による不起訴となるでしょう。
弁護士は違法な捜査があったと思われる場合には意見書などを検察官に送付します。
それによって検察官が違法な捜査があったと判断し,不起訴となる場合もあります。
また,起訴されてしまった場合には刑事裁判で違法な捜査があったと主張し,無罪判決を目指していきます。
警察官Xらよる鞄の中の確認自体は,先述のように職務質問に付随する所持品検査として判例で認められています。
しかし,今回のケースでは警察官XらはAさんから鞄を奪って中を確認したというのですから、職務質問に付随するものとして許容できる範囲を超えている可能性もあります。
そのような場合には違法な捜査であったとして,それによって得られた証拠は違法収集証拠として証拠とは認められません。
また,違法な捜査によって得られた証拠から派生した証拠も認められないと解されていますのでAさんの検査結果も証拠として認められない可能性が高いです。
そうなれば,検察官は適法な証拠がないので嫌疑不十分として事件を不起訴とする可能が非常に高いでしょう。
起訴されてしまった場合,覚せい剤取締法違反の単純所持,つまり個人使用目的で所持していた場合,初犯であれば執行猶予付きの判決となることが多いです。
ただし,自動的に執行猶予となるのではなく,裁判官に刑務所に入れるのではなく社会で更生することが可能であると認定してもらう必要があります。
具体的には,覚せい剤などの薬物は依存による再犯率が高いので薬物依存の専門医の診断を受けたり,ダルクのリハビリ等を受けたりしたことを証明できる書類などを裁判で提出していきます。
また再発防止に向けた家族・親戚の取り組みなども裁判で主張していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
覚せい剤などの薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士が多数所属しております。
覚せい剤などの薬物事件で逮捕されてしまいお困りの方は、0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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