薬物事件における違法な所持品検査

2021-01-07

薬物事件における違法な所持品検査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~今回の事件~

無職のAさんは、東京都港区の路上に立っていた覚せい剤の密売人から、自分で使用するための覚せい剤を購入しました。
Aさんは購入した覚せい剤をリュックサックに隠して、近くにある地下鉄の駅を目指して歩き始めましたが、しばらくして警視庁赤坂警察署の警察官2名に職務質問されたのです。
警察官から「リュックサックの中を見せてくれ。」と要求されたAさんは、この要求を「何もやましい物は入っていないので嫌です。」と拒みました。
しかし警察官はしつこくAさんにリュックサックの中身を見せるように要求してきたのです。
そのためAさんが警察官から離れようとしたところ、1人の警察官がAさんの両手を掴み、その隙にもう一人の警察官がリュックサックのチャックを勝手に開けてリュックサックの中をまさぐり、密売人から購入した覚せい剤を取り出したのです。
Aさんは、簡易鑑定の後に、その場で覚せい剤取締法(所持)違反現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです。)

~所持品検査~

所持品検査は、職務質問の効果をあげるうえで、必要性や有効性が認められるならば、職務質問に付随する行為として行うことができるとされています。
職務質問については、警察官職務執行法(警職法)で以下の様に規定されています。

警職法 第2条1項 質問
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者~を停止させて質問することができる。

ただし、職務質問は原則として対象者の同意がなければ行えず、所持品検査についても同様とされています。
その点において、令状を取得して強制的に行う捜索差押えとは区別されなければなりません。

~警察比例の原則~

警察活動には、警察比例の原則というものがあります。
警察比例の原則とは、「警察活動は、必要性に見合った相当なものでなければならない」とする原則のことです。
所持品検査も例外ではなく、警察比例の原則に従わなければなりません。
つまり、所持品検査には「必要性」と「相当性」が求められます。
所持品捜査の「必要性」や「相当性」には、明確な基準はなく、具体的状況の下で判断されるとされています。

~違法な所持品検査~

所持品検査が必要ではなかったり、相当ではなかったりする場合、つまり警察比例の原則に反するような違法な所持品検査であるときは、その後の刑事手続きにも影響が及ぶことがあります。
例えば、違法な所持品検査によって、覚せい剤が発見され、覚せい剤取締法(所持)違反現行犯逮捕された場合、違法に収集された覚せい剤は証拠として認められないことがあります。
その結果、有罪を立証するに足りる証拠がなく、無罪判決が言い渡されることもあるのです。
この証拠に関するルールは、法律に定められているものではありませんが、裁判例において当然のものとして扱われています。

~薬物事件のときの弁護活動~

覚せい剤取締法違反等の薬物事件で警察の捜査を受ける方のほとんどは、証拠隠滅や逃走等のおそれを理由に、逮捕勾留といった身体拘束を受けてしまいます。
そこで、ご家族の方から弁護士初回接見の依頼をすることをおすすめします。
初回接見とは、弁護士が、逮捕されてしまった方のもとに面会(接見)に行くサービスのことです。
弁護士は、立会人無しで逮捕されてしまった方と話し合うことができるので、事件に関して伝えたいことを正直に話すことができます。
また、今後の取調べで自分に不利なことにならないような対応の仕方を伝えることもできます。

今回の事例では、もはや捜索・差押えに等しい捜査が行われているとして、所持品検査が違法となる可能性があります。
弁護士は、そのような違法な捜査活動に対応できるスペシャリストです。
逮捕されてしまった方との接見をもとに、所持品検査が違法であったという証拠を集め、釈放の働きかけや無罪の主張をすることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士無料法律相談初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、東京都港区薬物事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。