【事例解説】覚醒剤取締法違反で起訴されて保釈を請求
覚醒剤取締法違反(単純所持)で起訴された後に保釈を請求するケースについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
Aさんは、自宅の小物入れに覚醒剤を入れて保管していたところ、ある日突然、警察による家宅捜索を受けて、覚醒剤が警察に見つかってしまいました。
Aさんは、覚醒剤取締法違反(単純所持)の疑いで逮捕されたのちに勾留されました。
Aさんは勾留期間が満了日に、覚醒剤取締法違反(単純所持)で起訴されました。
Aさんは起訴後、警察署の留置施設から拘置所に移動して勾留されています。
(この事例はフィクションです)
被疑者勾留と被告人勾留
勾留とは、犯罪の疑いがある人の身体を拘束する処分のことを言います。
事例のAさんは、覚醒剤取締法違反(単純所持)の疑いで逮捕の後に1回目の勾留がなされた後、覚醒剤取締法違反(単純所持)で起訴されてから、2回目の勾留がなされています。
前者の逮捕後になされる勾留は被疑者勾留と言い、後者の起訴されてからの勾留を被告人勾留と言います。
被疑者勾留は、逮捕後48時間に警察官から事件の送致を受けた検察官の請求によって裁判官が決定することで認められることになります。
被疑者勾留の期間は検察官による勾留請求から10日間が原則ですが、最大でさらに10日間勾留期間を延長することができ、被疑者勾留がなされる場所は、警察署の留置施設が一般的な運用になっています。
これに対して、被告人勾留は、検察官の請求によらずに裁判所が職権で判断することになります。
被告人勾留の期間は、公訴提起(起訴)があった日から2か月となっており、1か月ごとに更新されることになっています。
また、被告人勾留の場所は拘置所となっています。
保釈とは
保釈とは、保釈保証金を納付させて、勾留されている被告人の身体の拘束を解く制度です。
この保釈には、刑事訴訟法89条に規定されている権利保釈と、刑事訴訟法90条による裁量保釈及び刑事訴訟法91条による義務的保釈の3種類があります。
権利保釈は、法定の除外事由がある場合を除いて、勾留されている被告人又はその弁護人といった刑事訴訟法89条1項に規定されている請求権者による請求があれば、必ず認められる保釈のことを言います。
裁量保釈とは、権利保釈が認められない場合にも、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮して、適当と認めるときに、裁判所が職権で許可する保釈のことを言います。
義務的保釈とは、勾留による拘禁が不当に長くなったときに、裁判所が保釈の請求又は職権で許される保釈のことをいいます。
こうした保釈制度は、被告人勾留の段階で認められているものになりますので、まだ起訴されていない被疑者勾留の段階では、保釈制度を利用することはできません。