覚醒剤所持の疑いで逮捕 被疑者に認められた権利を解説

2021-08-19

今回は、覚醒剤所持の疑いで逮捕された被疑者に認められた権利について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

Aさんは、街頭で警察官から職務質問を受け、携行していたバッグから覚醒剤様の粉末入りのパケットが発見されました。
「覚醒剤様の粉末」が本物の覚醒剤であることが確認されると、Aさんは覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕されてしまいました。
警察官から入手先を問われると、Aさんは「知らない。誰かが勝手にバッグへ入れた」などと供述し、後日実施された自宅の捜索により発見された覚醒剤についても、「俺のではない。知人が置いて行ったものだ。知人の連絡先は知らない」と話しています。
これを容易に信じない警察官らによる取調べは日に日に厳しくなり、Aさんも負担に感じています。
他にAさんが自身の身を守る対応方法はないのでしょうか。(フィクションです)

~被疑者に認められた権利~

虚偽供述の疑いを強める警察官らによって、Aさんに対する取調べは日に日に厳しくなっています。
Aさんが身を守る手段として、被疑者としての権利を行使することが考えられます。
被疑者に認められた権利にはどのようなものがあるのでしょうか。

(弁護人選任権)
被疑者・被告人はいつでも資格を有する弁護人を依頼することができます。
このことは、憲法において保障されており(憲法第37条3項)、逮捕・勾留の際は、警察官や検察官、裁判官も逮捕された被疑者に対し、弁護人選任権があることを知らせなければなりません(刑事訴訟法第203条、204条、207条)。
Aさんが依頼できる弁護士には、①当番弁護士、②国選弁護人、③私選弁護人があります。

(接見交通権)
身体を拘束された被疑者は、警察官や検察官の立会いなく、弁護人や弁護人になろうとする者と面会することができます。
Aさんの逮捕直後は、多くの場合、家族や友人と会うことができず、また、勾留された後に接見禁止決定がなされれば、勾留後もこれらの者と会うことができません。
この場合であっても、弁護人や弁護人になろうとする者とは接見できます。
また、Aさんの味方と話をし、アドバイスを受けることができる唯一の機会になります。
Aさんの供述には確かに、にわかに信じがたい部分が多く、取調官が容易に信用しないことは想像に難くありません。
もし、本当に虚偽供述をしてしまったのであれば、この接見交通権を利用して弁護士に事実を打ち明け、今後の対応策を検討するのがよいでしょう。

(黙秘権・供述拒否権)
取調べの際、Aさんは自己の意思に反して供述する必要はありません。
しかし、この権利を行使する場合は、自身に有利なことを供述することができなくなりますし、身体拘束期間が伸びてしまう可能性もあります。
積極的に取調べに応じることにより反省の態度を示し、最終的な処分を軽くすることを目指した方がよい場合もあります。
この権利の行使にあたっては、弁護士とよく相談する必要があります。

(署名押印拒絶権)
警察官や検察官に話した内容は、供述調書としてまとめられ、後の裁判において証拠として活用されることになります。
取調官がAさんの話を聞き、これをまとめて調書にし、署名又は押印を求める形式がとられることが多いです。
署名又は押印は、「取調官が被疑者の供述した通りに調書を作成した」という趣旨でなされるものです。

もし話していないことや、話したことと違うことが調書に記載されていた場合、被疑者は署名又は押印を拒否することができます(刑事訴訟法第198条5項但書。なお、供述した通りの調書であっても、法律上、署名押印拒絶権を行使することはできます)。
供述した内容と異なる調書に、安易に署名・押印すると、後の裁判で不利な証拠として採用されるおそれがあります。
時には、執拗に、威圧的に署名・押印を迫られる場合があるかもしれません。
そのような場合であっても、間違った調書に署名・押印することは避け、弁護士に相談するようにしましょう。

(増減変更申立権)
調書が供述した通りに作成されていない場合や、自身の言い分が記載されていない場合には、調書を訂正するよう申し立てることができます(刑事訴訟法第198条4項)。
納得がいくまで修正を求めて構いません。
申し立てに応じてもらえない場合には、署名・押印を拒否すべきです。
また、今後の取調べにおいて、黙秘権・供述拒否権を行使することも検討しなければなりません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
捜査機関の取調べに疑問のある方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。