(事例紹介)覚醒剤密売による麻薬特例法違反で実刑判決に

2023-01-17

(事例紹介)覚醒剤密売による麻薬特例法違反で実刑判決に

~事例~

(略)被告(47)は、平成30年8月からのおよそ2年間に、全国各地で何度も覚醒剤を密売したほか、自宅で大麻やコカインなどを所持していたとして、麻薬特例法違反などの罪に問われました。
これまでの裁判で、検察は懲役10年と罰金300万円を求刑したのに対し、弁護側は、被告は末端の密売人に過ぎないなどとして、罪を軽くするよう求めていました。
21日の判決で岡山地方裁判所の倉成章裁判長は「2400万円以上売り上げ、ツイッターを使い広く客を集めている。密売の規模はそれなりに大きく、多量の覚醒剤などを社会に拡散させた点は悪質だ」と指摘しました。
そのうえで「自分で使う覚醒剤の代金を浮かせようなどと考えて密売をし、大麻などを所持していたことを考えると、違法薬物との結びつきの強さは顕著だ。再犯のおそれは否定できない」などと述べて、懲役9年と罰金300万円、それに2400万円余りの追徴金などの判決を言い渡しました。
(※2022年10月21日18:59NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~覚醒剤密売行為と麻薬特例法違反~

今回取り上げた事例は、被告人が覚醒剤の密売や大麻・コカインの所持などの行為による、麻薬特例法違反などの罪に問われ、懲役9年と罰金300万円、2,400万円余りの追徴金などの実刑判決を受けたという内容の報道です。
被告人は全国各地で何度も覚醒剤を密売したと報道されていますが、問われている犯罪名が覚醒剤取締法違反ではなく、麻薬特例法違反という犯罪名が挙げられていることに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、覚醒剤の密売行為麻薬特例法違反の関係を確認していきます。

まず、麻薬特例法とは、正式名称を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」という法律で、麻薬新条約と呼ばれる条約の締結に伴ってできた法律です。
麻薬特例法では、薬物犯罪による収益等を剥奪すること等によって規制薬物に係る不正行為の助長を防止したり、薬物犯罪に関する特例を定めたりしています。

今回取り上げた事例で麻薬特例法と関わってくるのは、被告人が何度も覚醒剤の密売を行っていたという部分であると考えられます。
というのも、麻薬特例法には以下のような条文があります。

麻薬特例法第5条
次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第8条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は5年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
第4号 覚醒剤取締法第41条又は第41条の2(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

麻薬特例法という名前だけ聞くと、麻薬しか対象となっていないように思えますが、このようにして覚醒剤もその規制対象となっています。
こうした部分に、麻薬特例法違反という犯罪の名前と内容のギャップがあるかもしれません。
この条文によると、覚醒剤取締法第41条もしくは第41条の2の所持以外の部分に当たる犯罪を「業として」行った場合、麻薬特例法違反となるとされています。
覚醒剤取締法第41条・第41条の2に当たる犯罪は、以下のものです。

覚醒剤取締法第41条
第1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第41条の5第1項第2号に該当する者を除く。)は、1年以上の有期懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

覚醒剤取締法第41条の2
第1項 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

すなわち、覚醒剤の輸出入や譲渡し・譲受けを「業として」行うと、特例に当てはまり、覚醒剤取締法違反ではなく麻薬特例法違反として処罰されることになるのです。
「業として」行われたかどうかは、その行為が反復継続して行われていたのかどうか、営利性はあったのかどうかなどの事情によって判断されます。
例えば、今回取り上げた報道では、被告人は何度も覚醒剤の密売をしたとされており、高額の売り上げ金を売上げていたことや、SNSで集客をしていたことなどが判決で触れられていました。
何度も覚醒剤の密売をしたということであれば、反復継続して覚醒剤を譲り渡していたということになるでしょうし、高額の売上金を出していたことや集客を行っていたことからは営利性も認められそうです。
こういったことから、被告人は「業として」覚醒剤を売っていたという判断がなされ、麻薬特例法違反で有罪であるとされたのでしょう。

先ほど挙げた条文の通り、麻薬特例法の刑罰は「無期又は5年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金」と定められています。
無期懲役が定められていたり、刑罰の下限が5年と設定されていたり、1,000万円以下の罰金が併科される可能性があったりと、非常に重い刑罰であることが分かります。
今回取り上げた事例でも、被告人が懲役9年と罰金300万円、2,400万円余りの追徴金などといった非常に重い刑罰を科されていることからもお分かりいただけるでしょう。
重い刑罰が予想されるとなれば、できるだけ刑罰を軽減したいと考えられる方も少なくないでしょう。
そのためには、刑事裁判でどういった証拠を出しどのような主張をしていくのかなど、刑事裁判を見据えて早い段階から準備を行っていく必要があります。
まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

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