薬物別―ヘロイン

1 麻薬及び向精神薬取締法について

ヘロインの所持・使用・製造・輸出入・譲渡・譲受等の行為が「麻薬及び向精神薬取締法」によって処罰されます。

その他にも「麻薬特例法」による規制もあります。

ヘロインは、麻薬及び向精神薬取締法において「ジアセチルモルヒネ等」の薬物として本法の中でも重い刑罰が科せられています。

日本における法律上の意味における麻薬とは、麻薬及び向精神薬取締法の別表に規定がされています。

具体的には、ヘロイン、コカイン、THC、LSD、MDMAなどです。国際的には、LSDやMDMAのような幻覚剤の多くは、向精神薬と認識されていますが、日本の法律上は、麻薬として扱われています。

また、向精神薬とは、精神に作用する薬物の総称であり、非常に広い意味を有する用語ですが、規制の対象となるのは麻薬の場合と同じく、麻薬及び向精神薬取締法の別表で指定されている薬物となっています。

 

2 薬効など

ヘロインは、けしを原料とした薬物で、けしからあへんを採取し、あへんから抽出したモルヒネを精製して作られます。

ヘロインには、静脈注射のほか、火であぶって煙を吸う方法、吸引具により吸引する方法、経口による方法があります。

ヘロインは、強い精神的・身体的依存が特徴の薬物です。

ヘロインには、神経を抑制する作用があり、強い陶酔感・快感を覚えます。

さらに、2~3時間ごとに摂取しないと、体中の筋肉に激痛が走り、骨がバラバラになって飛散するかと思うほどの痛み、悪寒、嘔吐、失神などの激しい禁断症状が起こります。

また、大量に摂取すると、呼吸困難、昏睡の後、死に至ります。

ヘロインは心身への影響が非常に強いことから、医学的な使用も一切禁止されています

 

3 法定刑と裁判の種類

(1)輸出・輸入・製造

ア 営利目的がない場合
法定刑は1年以上の懲役です。
通常の公判手続に付されます。

イ 営利目的がある場合
法定刑は無期若しくは3年以上の懲役で、情状により1000万円以下の罰金を併科されます。
法定刑に無期懲役が入っているので、裁判員裁判に付されます。

 

(2)譲渡・譲受・所持・施用

ア 営利目的がない場合
法定刑は10年以下の懲役です。
通常の公判手続に付されます。

イ 営利目的がある場合
法定刑は1年以上の懲役で、情状により500万円以下の罰金を併科されます。
通常の公判手続に付されます・

 

4 弁護活動

①身に覚えがない場合

ヘロインの所持や譲り渡し等の事件では、たとえば中身を知らされず運ばされた場合のように、違法な物とは知らずに行った行為で検挙されることが考えられます。

違法性の認識については、それが覚せい剤であるという認識までは要求されず、違法な薬物であるという程度の認識で足りるとされているため、知らなかったという弁解はなかなか通用しませんが、本当に知らなかったような場合には、犯罪が成立しないのですから、客観的な状況をもとに無実であることをしっかりと主張する必要があります。

 

②身に覚えがある場合

仮に麻薬及び向精神薬取締法違反事件などを起こしてしまっていたとしても、それが捜査機関による違法な捜査によって発覚したものであれば、その違法性ゆえに不起訴処分や無罪判決を得られる可能性があります。

ですから、職務質問、所持品検査、採尿・採血、捜索、差押え、逮捕、勾留、取調べなど各捜査段階において、重大な違法行為がなかったか・それによって重要な証拠であるヘロインが収集されたのではないかという点を徹底的に調査して不起訴処分や無罪判決の獲得を目指します。

麻薬及び向精神薬取締法違反などに争いがない場合は、可能な限り寛大な処分が下されるように、効果的な情状弁護を行っていくことが大切です。

具体的には、犯行を素直に認め反省している旨の意思表示をした上で、薬物に対する依存性・常習性がないこと、再犯の危険がないこと、共犯者との関係では従属的な立場にあったことなどを説得的に主張します。

特に薬物犯罪は、自分の力だけで再犯を防ぐことが困難ですから、専門医や薬物依存からの回復のための施設などを利用することも重要です。

薬物依存は、そこから抜け出すことは容易ではないですし、裁判官もそのことは十分理解しています。

ですから、減刑や執行猶予付き判決の獲得には周りの協力を得られる環境づくりが十分にできていることを裁判で示すことが重要です。

 

③身柄解放活動

麻薬及び向精神薬取締法違反事件などで逮捕・勾留されてしまった場合でも、事案に応じて釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行います。

薬物事犯では、身柄を開放することによって、その期間に再度薬物に手を出すのではないか、ということが非常に危惧されています。

また、薬物は被害者のいない密行性の高い犯罪ですから、共犯者との口裏合わせなどによる証拠隠滅の可能性も高いと判断されがちです。

このように、薬物犯罪事件で逮捕・勾留されると、長期間身体拘束を受ける可能性が高く、保釈も認められにくいのが現状です。

しかし、そのような場合でも、証拠隠滅の恐れがないことや逃亡の恐れがないことを示す事情を示すとともに、場合によっては、一刻も早い治療のために早期に身柄を開放する必要があるとの主張をすることで、釈放・保釈の判断がなされることもあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所で、薬物犯罪事件も多数取り扱っております。

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被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。

 

※裁判員裁判について

営利目的の輸出・輸入・製造の場合には、裁判員裁判対象事件となります。

裁判員裁判では、連日の集中審理が行われますので、そのために入念な事前準備が必要となります。

弁護士としては、公判前整理手続きの中で、積極的に証拠の開示を求めるとともに、弁護側からの主張を立て、何処が争点となるのかをしっかりと把握したうえで、公判での訴訟活動に向けた準備を行う必要があります。

裁判員裁判では、集中した審理を行うために、公判までに膨大な資料を精査し、何が有利な証拠となるのかを見極めたうえで、しっかりとした主張構造を整える必要があります。

裁判員裁判において、充実した弁護を行うためには、高い弁護技術が求められます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、数多くの刑事事件の経験を基に、裁判員裁判についてもお力になれるはずです。

 

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