外国で大麻を使った場合に日本で逮捕されるのか?

2020-07-16

外国で大麻を使った場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します

~ケース~

カナダに留学している大学3年生のAさんは下宿先のルームメイトに誘われて,クラブで行われる大麻パーティーに参加し大麻を吸引した。
Aさんは「カナダは大麻合法だから」という文と共に大麻を吸引している様子をSNSにアップした。
夏休みになり日本に帰国したAさんは同級生であるBさんに「大麻が合法の国で吸引しても大麻取締法が適用されてお前,逮捕されるぞ」と脅かされた。
Bさんからの言葉で逮捕されてしまうのではないかと不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用した。
(フィクションです)

~大麻取締法と国外犯~

カナダでは2018年10月に大麻が解禁され使用が合法となりました。
しかしながら,大多数の国では大麻は依然として違法のままであり,日本も大麻取締法により所持などが禁止されています。
カナダには語学留学や旅行などで多くの日本人が訪れ,今回のケースのAさんのように何らかの機会に大麻を使用することや自ら購入し大麻を使用するというケースも多いでしょう。
今回はカナダのように大麻の使用が合法化された国や地域で大麻を使用した場合に日本の法律で処罰されるのかを考えていきたいと思います。

まず重要な点として,大麻取締法では大麻使用を禁止していません。
そのため,日本国内でも大麻を使用するという行為だけでは何ら犯罪を構成しません。
しかし,使用するためには所持する必要がありますので結局のところ大麻所持を禁止する大麻取締法違反となります。
また,薬物犯罪では検査による成分検出や実際に違法薬物を所持していることが犯罪の証拠となります。
そのため,大麻使用が違法ではない国で大麻を使用した場合でも証拠の関係上,日本国内で大麻取締法で検挙するのは現実的ではないでしょう。
では,理論的には大麻取締法違反で検挙が可能なのかを検討していきます。

まず大麻取締法24条の8では「第24条、第24条の2、第24条の4、第24条の6及び前条の罪は、刑法第2条の例に従う。」と規定されています。
刑法第2条は刑法を「日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する」と規定します。
次に掲げる罪とは内乱や外患,通貨偽造や有価証券偽造,公文書偽造など,国家の根幹に対する犯罪行為の場合、日本人であるか外国人であるか、また犯罪地がどこであるかを問わず,当該犯罪を犯したすべての者に対して日本の刑法を適用するという規定なのです。

ところで,特別法には大麻取締法のように「~の罪は,刑法第2条の例に従う。」と規定されている物も多いです。
例としては覚せい剤取締法やあへん法,ハイジャック処罰法などがあります。
これらが刑法第2条の例に従うと規定している意味は,当該犯罪が国家間に共通する法益を侵害する犯罪であり各国に協力してその処罰を確保するためです。
そうすると,大麻取締法24条の8は大麻の取り締まりは国家間に共通する利益であるから日本としても相手国と協力して大麻の取り締まりにあたるという規定になるでしょう。
そして,カナダが大麻を禁止していない以上,日本とカナダの間で大麻を取り締まるという共通の利益が存在しないのですから日本においてカナダでの大麻の所持を罰することはできないと考えるべきでしょう。

なお,大麻取締法24条の8が規定している犯罪は,大麻を「みだりに」所持,栽培等をすることです。
法令において「みだりに」とは違法性があることを示す言葉ですのですなわち大麻を違法に所持等する必要があります。
そのため,日本国内において日本の法に反するのみならず,その行為が行われた国の法律にも違反していなければ処罰されないと考えられます。
さもなければ,カナダで合法に大麻を所持・使用したカナダ人が日本に旅行などで訪れた際に大麻取締法違反で処罰されることになってしまいます。

上記はあくまでも法解釈の一つであり事案の事情によっては逮捕されてしまう可能性もあります。
しかしながら,証拠の関係上,起訴されて刑事裁判となる可能性は低いと考えてよいでしょう。
不安な場合には弁護士に相談されることをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
これまで数多くの薬物事件を手掛けてまいりました。
外国で大麻を使ってしまい不安というような場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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