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(事例紹介)覚醒剤密売による麻薬特例法違反で実刑判決に

2023-01-17

(事例紹介)覚醒剤密売による麻薬特例法違反で実刑判決に

~事例~

(略)被告(47)は、平成30年8月からのおよそ2年間に、全国各地で何度も覚醒剤を密売したほか、自宅で大麻やコカインなどを所持していたとして、麻薬特例法違反などの罪に問われました。
これまでの裁判で、検察は懲役10年と罰金300万円を求刑したのに対し、弁護側は、被告は末端の密売人に過ぎないなどとして、罪を軽くするよう求めていました。
21日の判決で岡山地方裁判所の倉成章裁判長は「2400万円以上売り上げ、ツイッターを使い広く客を集めている。密売の規模はそれなりに大きく、多量の覚醒剤などを社会に拡散させた点は悪質だ」と指摘しました。
そのうえで「自分で使う覚醒剤の代金を浮かせようなどと考えて密売をし、大麻などを所持していたことを考えると、違法薬物との結びつきの強さは顕著だ。再犯のおそれは否定できない」などと述べて、懲役9年と罰金300万円、それに2400万円余りの追徴金などの判決を言い渡しました。
(※2022年10月21日18:59NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~覚醒剤密売行為と麻薬特例法違反~

今回取り上げた事例は、被告人が覚醒剤の密売や大麻・コカインの所持などの行為による、麻薬特例法違反などの罪に問われ、懲役9年と罰金300万円、2,400万円余りの追徴金などの実刑判決を受けたという内容の報道です。
被告人は全国各地で何度も覚醒剤を密売したと報道されていますが、問われている犯罪名が覚醒剤取締法違反ではなく、麻薬特例法違反という犯罪名が挙げられていることに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、覚醒剤の密売行為麻薬特例法違反の関係を確認していきます。

まず、麻薬特例法とは、正式名称を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」という法律で、麻薬新条約と呼ばれる条約の締結に伴ってできた法律です。
麻薬特例法では、薬物犯罪による収益等を剥奪すること等によって規制薬物に係る不正行為の助長を防止したり、薬物犯罪に関する特例を定めたりしています。

今回取り上げた事例で麻薬特例法と関わってくるのは、被告人が何度も覚醒剤の密売を行っていたという部分であると考えられます。
というのも、麻薬特例法には以下のような条文があります。

麻薬特例法第5条
次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第8条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は5年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
第4号 覚醒剤取締法第41条又は第41条の2(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

麻薬特例法という名前だけ聞くと、麻薬しか対象となっていないように思えますが、このようにして覚醒剤もその規制対象となっています。
こうした部分に、麻薬特例法違反という犯罪の名前と内容のギャップがあるかもしれません。
この条文によると、覚醒剤取締法第41条もしくは第41条の2の所持以外の部分に当たる犯罪を「業として」行った場合、麻薬特例法違反となるとされています。
覚醒剤取締法第41条・第41条の2に当たる犯罪は、以下のものです。

覚醒剤取締法第41条
第1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第41条の5第1項第2号に該当する者を除く。)は、1年以上の有期懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

覚醒剤取締法第41条の2
第1項 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

すなわち、覚醒剤の輸出入や譲渡し・譲受けを「業として」行うと、特例に当てはまり、覚醒剤取締法違反ではなく麻薬特例法違反として処罰されることになるのです。
「業として」行われたかどうかは、その行為が反復継続して行われていたのかどうか、営利性はあったのかどうかなどの事情によって判断されます。
例えば、今回取り上げた報道では、被告人は何度も覚醒剤の密売をしたとされており、高額の売り上げ金を売上げていたことや、SNSで集客をしていたことなどが判決で触れられていました。
何度も覚醒剤の密売をしたということであれば、反復継続して覚醒剤を譲り渡していたということになるでしょうし、高額の売上金を出していたことや集客を行っていたことからは営利性も認められそうです。
こういったことから、被告人は「業として」覚醒剤を売っていたという判断がなされ、麻薬特例法違反で有罪であるとされたのでしょう。

先ほど挙げた条文の通り、麻薬特例法の刑罰は「無期又は5年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金」と定められています。
無期懲役が定められていたり、刑罰の下限が5年と設定されていたり、1,000万円以下の罰金が併科される可能性があったりと、非常に重い刑罰であることが分かります。
今回取り上げた事例でも、被告人が懲役9年と罰金300万円、2,400万円余りの追徴金などといった非常に重い刑罰を科されていることからもお分かりいただけるでしょう。
重い刑罰が予想されるとなれば、できるだけ刑罰を軽減したいと考えられる方も少なくないでしょう。
そのためには、刑事裁判でどういった証拠を出しどのような主張をしていくのかなど、刑事裁判を見据えて早い段階から準備を行っていく必要があります。
まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

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(事例紹介)DMT輸入事件で逮捕された事例

2023-01-10

(事例紹介)DMT輸入事件で逮捕された事例

~事例~

富山県警高岡署と県警組織犯罪対策課、大阪税関伏木税関支署は、強い幻覚作用がある麻薬成分DMTを輸入したとして麻薬及び向精神薬取締法違反(使用目的輸入)の疑いで、(略)容疑者(27)=大麻取締法違反の罪で起訴済み=を再逮捕した。富山県警のDMTに絡む摘発は初めて。
再逮捕容疑では、今年四月、米国から自分で使う目的で、DMTを含む液体〇・五九グラムが入ったカートリッジ一個を輸入したとされる。「自分で使用するために輸入したことに間違いない」と容疑を認めている。
税関職員による輸入郵便物捜査で発見され、伏木税関支署と県警が合同で捜査を進めていた。
(略)
容疑者はカートリッジの他、吸引具も別の郵便物で輸入し、押収された。同支署は二十七日に関税法違反容疑で富山地方検察庁高岡支部に告発した。
(※2020年7月28日5:00中日新聞配信記事より引用)

~DMTとは~

今回取り上げた事例では、富山県警と大阪税関が、DMTの輸入による麻薬取締法違反の容疑で容疑者を逮捕したという内容が報道されています。
そもそも、このDMTというものに対して、聞き馴染みがないという方も多いのではないでしょうか。

DMTは、「ジメチルトリプタミン」という成分のことを指しており、幻覚作用があるとされています。
このDMTは、麻薬取締法によって「麻薬」として指定されています(麻薬取締法第2条第1項第1号、別表第1第75号、麻薬及び向精神薬を指定する政令1(2)④)。
ですから、DMTを含むものを所持したり輸入したりすることは、麻薬取締法に違反する犯罪行為となるのです。

麻薬取締法第65条
第1項 次の各号の一に該当する者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
第1号 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第69条第1号から第3号までに該当する者を除く。)
(略)
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

麻薬取締法第66条
第1項 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

麻薬取締法違反などの薬物事件では、DMTのような聞き馴染みのない薬物による犯罪であることもあります。
どういった容疑をかけられているのか、容疑を犯罪はどの程度の重さの刑罰でありどういった手続が予想されるのかなど、違法薬物の名前や犯罪名からはなかなか想像しづらい部分もあると思いますので、早めに弁護士に相談してみることがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕された方にも在宅捜査を受けている方にも迅速にご相談いただけるよう、0120-631-881でいつでもサービスのご案内を行っています。
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(事例紹介)MDMAの密輸入 税関に告発され逮捕された事例

2023-01-03

(事例紹介)MDMAの密輸入 税関に告発され逮捕された事例

~事例~

名古屋税関清水税関支署は21日、合成麻薬MDMAの錠剤を大量に密輸したとして麻薬取締法違反の疑いで静岡南署などに逮捕された(中略)容疑者(25)=ベトナム国籍=を関税法違反容疑で静岡地検に告発した。
同支署によると、密輸された錠剤は4007錠。ドイツから成田空港に空輸され、横浜税関川崎外郵出張所の職員が1月11日にエックス線や目視による検査で発見した。サプリメントのボトル2個に各千錠ずつ、コーヒー豆の袋に約2千錠が詰められ、段ボール箱に収められていたという。末端価格は計約2千万円に上るとされる。
同支署によると、段ボール箱の送り先が容疑者の自宅になっていたという。同支署が県警に通告。静岡南署と県警薬物銃器対策課が捜査を進め、容疑者ら2人を麻薬取締法違反の疑いで逮捕した。
(後略)
(※2022年2月22日あなたの静岡新聞配信記事より引用)

~違法薬物の密輸入と税関~

今回の事例では、名古屋税関清水税関支署が、MDMAの密輸をした関税法違反の容疑で静岡地検に容疑者を告発したという旨が報道されています。
税関薬物事件告発するというケースは耳慣れないかもしれませんが、MDMAなどの違法薬物の密輸入事件では、税関違法薬物を発見したことから違法薬物密輸入行為が発覚し、税関が捜査機関に対して告発を行うというケースも珍しくありません。
今回は、税関MDMAなど違法薬物密輸入を告発して刑事事件になるというケースについて注目していきます。

まず、違法薬物密輸入は、単にその薬物の規制を定めている法律(今回のMDMAであれば麻薬取締法)に違反するだけでなく、関税法にも違反することになります。

関税法第109条
第1項 第69条の11第1項第1号から第6号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第2項 第69条の11第1項第7号から第9号まで及び第10号に掲げる貨物を輸入した者は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

関税法の「輸入してはならない貨物」としては、以下のように、麻薬や向精神薬、大麻や覚醒剤などの違法薬物が含まれています。

関税法第69条の11第1項
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
第1号 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚醒剤取締法にいう覚醒剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。

こうしたことから、MDMAを密輸入することは、麻薬取締法違反だけでなく、関税法違反にもなるのです。

税関職員は、警察官や検察官などと異なり、捜査権をもつ人たちではありません。
しかし、関税法では、以下のようにして犯則事件の調査・処分について定めています。

関税法第119条第1項
税関職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人(以下この項及び第121条第1項(臨検、捜索又は差押え等)において「犯則嫌疑者等」という。)に対して出頭を求め、犯則嫌疑者等に対して質問し、犯則嫌疑者等が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又は犯則嫌疑者等が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。

犯則事件とは、租税犯に関する事件のことを指し、ここでは主に関税法違反事件のことを指します。
関税法第119条以降では、こうした関税法違反事件の際の税関職員の権限について定めており、税関職員は、関税法違反事件については、関税法違反の容疑者に対して出頭を求めたり、令状をもって捜索や差押え(関税法第121条)をしたりできるという、刑事事件と同じような捜査権をもつ内容となっています。
そして、その調査の結果、犯則がある=関税法違反であると判断される場合には、税関は検察官に告発を行わなければならないとも定められています(関税法第144条)。

つまり、税関職員は、関税法違反に関してのみ、一般の刑事事件で行われる捜査に類似したことができ、さらにその結果関税法違反であると判断された場合には、検察官への告発を行うということになっているのです。
ですから、今回の事例でも、麻薬取締法違反の容疑で警察署などに逮捕された容疑者について、今度は税関関税法違反の容疑で検察庁に告発をするという流れになっていたのです。

MDMAなどの違法薬物密輸入事件では、薬物法に違反するものだけでなく、関税法違反も関係してくることから、なかなか事件の流れ全体や見通しが分かりづらいところがあるでしょう。
だからこそ、刑事事件化した段階で一度弁護士の話を聞き、事件の流れや見通しなどを把握したうえで刑事手続に臨まれることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件化した段階から公判活動まで、刑事事件を多く取り扱っている弁護士が一貫してサポートを行っています。
違法薬物密輸入税関告発されてしまった、家族が麻薬取締法違反の容疑で逮捕されてしまったという状況でお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)他人の家に覚醒剤・MDMAを置いて所持罪に

2022-12-27

(事例紹介)他人の家に覚醒剤・MDMAを置いて所持罪に

~事例~

元交際女性への腹いせに覚醒剤などを女性が住むアパートに置いたとして、福岡県警粕屋署は5日、(略)男(42)を覚醒剤取締法違反(所持)と麻薬取締法違反(同)の両容疑で逮捕した。

発表によると、男は昨年7月22日頃、志免町の女性(20歳代)が住むアパートの敷地内で、覚醒剤約0・4グラム(末端価格約2万4000円)と合成麻薬「MDMA」約0・07グラム(同約5000円)を所持した疑い。「別れたことへの腹いせで置いた」と容疑を認めている。
(後略)
(※2022年10月6日17:51読売新聞オンライン配信記事より引用)

~他人の家に違法薬物を置いて所持罪で逮捕~

今回取り上げた事例では、男性が元交際相手の女性のアパートに覚醒剤MDMAを置き、覚醒剤MDMAを所持したという覚醒剤取締法違反麻薬取締法違反の容疑で逮捕された旨が報道されています。
多くの方がご存知の通り、覚醒剤MDMAを所持することは違法であり、それぞれ覚醒剤取締法違反麻薬取締法違反という犯罪になります。

覚醒剤取締法第41条の2第1項
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。

麻薬取締法第66条第1項
ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。

報道では、アパートに居住していた女性が覚醒剤MDMAを所持していたように装おうとしたとされていますが、たとえその通りに女性の元に覚醒剤MDMAを置いていったとしても、女性自身が覚醒剤MDMAの存在を知らずにいたのであれば、女性には覚醒剤MDMAの所持の故意がないということになり、女性に覚醒剤取締法違反麻薬取締法違反の罪が成立することはありません。
反対に、男性が報道の通りの行為をしていた場合、当然男性は覚醒剤MDMAを違法薬物であると認識しながら、女性のアパートに置くまでの間所持していたことになりますから、覚醒剤取締法違反麻薬取締法違反といった犯罪が成立することになります。

覚醒剤MDMAの所持事件では、自分が違法薬物を使用するために所持していたというケースも多いですが、今回の事例のような自己使用以外の目的による所持事件も存在します。
イメージと異なる態様・目的の刑事事件となると、当事者の周囲の方もどのように対応すべきなのか分からずに大きな不安を抱えてしまうということも予想されます。
薬物所持事件では逮捕・勾留による身体拘束を受けることも多いため、そうした対応も含めて弁護士に早めに相談されることをおすすめします。

0120-631-881では、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士によるサービスのお申込みをいつでも受け付けています。
逮捕・勾留された方についてもスムーズに弁護活動が開始できるよう、スタッフがご案内いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

【事例紹介】覚醒剤の使用で自首し、逮捕された事例

2022-12-20

【事例紹介】覚醒剤の使用で自首し、逮捕された事例

覚醒剤を使用したと110番し、その後下京警察署緊急逮捕された事件を基に、自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

京都府警下京署は14日までに、覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで、(中略)男(30)=京都市下京区=を逮捕した。
逮捕容疑は、(中略)覚醒剤を使用した疑い。「覚醒剤を体に打ちました」と容疑を認めているという。
下京署によると、3日に容疑者が自宅から「覚醒剤を使用したので自首したい」と110番し、その後、同署を訪れたため緊急逮捕した。容疑者の尿からは覚醒剤の陽性反応が確認され、注射器も所持していたという。
(12月14日 京都新聞 「覚醒剤使用の疑いで京都市職員の30歳男を逮捕 「自首したい」と110番通報」より引用)

覚醒剤使用の禁止

覚醒罪取締法第19条では、使用の許可を得ていない者が不正に覚醒剤を使用することを禁止しています。

今回の事例では、容疑者の尿から覚醒剤の陽性反応が確認され、本人も覚醒剤の使用を認めているようです。
覚醒剤の不正使用は禁止されていますので、容疑者が覚醒剤取締法違反で有罪になった場合には、10年以下の懲役が科されます。(覚醒剤取締法第41条の3)

自首

刑法第42条1項
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を軽減することができる。

犯罪行為を行った際に、警察などに発覚する前に自首すると、罪が軽くなる場合があります。
注意点としては、刑法ではあくまで自首が成立した場合に「その刑を軽減することが『できる』」としているため、自首をしたからといって必ず刑罰が軽くなると決まっているわけではないという点が挙げられます。
こうした自首のメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、自首をするかどうか決めることがおすすめです。

今回の事例では、容疑者は110番して自首したい旨を伝え、下京警察署を訪れています。
容疑者が110番するまでに容疑者が覚醒剤を使用していたことが発覚していなかったのであれば自首は認められますので、有罪になった際に科される量刑が軽くなる可能性があります。

また、今回の事例では、自首した容疑者がそのまま逮捕されていますが、自首によって逮捕や勾留といった身体拘束のリスクを軽減できる場合もあります。
自首の際に弁護士が同行し、警察官に対して逮捕しないように交渉することも可能ですので、自首を検討している場合には一度弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
自首を検討されている方、覚醒剤取締法違反でお困りの方、ご家族が逮捕された方はぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

(事例紹介)SNSで覚醒剤販売を呼びかけ麻薬特例法違反に

2022-12-13

(事例紹介)SNSで覚醒剤販売を呼びかけ麻薬特例法違反に

~事例~

ツイッターで覚醒剤の取引を呼びかけたとして、京都府警組対3課と中京署は1日までに、麻薬特例法違反(あおり、唆し)の疑いで、栗東市の無職の男(41)を逮捕した。

逮捕容疑は昨年4月5日、ツイッターに覚醒剤を意味する隠語「氷」の絵文字を使って「京都、滋賀から配達員がすぐ対応します」などと書き込み、覚醒剤の販売を広く呼びかけた疑い。「身に覚えがない」と容疑を否認しているという。
(※2022年6月1日15:17京都新聞配信記事より引用)

~SNSでの覚醒剤販売呼びかけ~

今回の事例では、男性が麻薬特例法違反の容疑で逮捕されたと報道されています。
男性の逮捕容疑は、覚醒剤の隠語を使用してSNSで覚醒剤の販売を呼びかけたというものです。

ご存知の方も多いように、覚醒剤は所持すること自体が違法であり、その輸出入や所持、授受、使用などの行為は覚醒剤取締法によって禁止されています。

覚醒剤取締法第41条
第1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第41条の5第1項第2号に該当する者を除く。)は、1年以上の有期懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

覚醒剤取締法第41条の2
第1項 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

覚醒剤取締法第41条の3第1項
次の各号の一に該当する者は、10年以下の懲役に処する。
第1項 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者

覚醒剤に関連してこれらの行為が禁止されていることや、それが覚醒剤取締法という法律で禁止されていることは、先ほど触れたように、多くの方がご存知のことでしょう。

しかし、今回の事例では、逮捕された男性にかけられた容疑の内容は、「SNSで覚醒剤の販売を呼びかける」というものです。
覚醒剤を実際に販売したわけではなく、販売を広く呼びかけたということも、犯罪になるのでしょうか。

今回の事例で男性が違反した容疑をかけられている麻薬特例法(正式名称:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)という法律では、以下のような条文があります。

麻薬特例法第9条
薬物犯罪(前条及びこの条の罪を除く。)、第6条の罪若しくは第7条の罪を実行すること又は規制薬物を濫用することを、公然、あおり、又は唆した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

麻薬特例法では、「薬物犯罪」の中に、覚醒剤取締法第41条、第41条の2を含めています(麻薬特例法第2条第2項第5号)。
つまり、覚醒剤の販売を含む、覚醒剤の譲渡し・譲受けを公然、あおり、唆した場合には、それだけで麻薬特例法に違反することになります。

今回の事例では、逮捕された男性がSNSで隠語を用いて覚醒剤の販売を呼びかけた疑いをかけられています。
利用されたSNSは誰でもアクセスできるものであるため、本当に覚醒剤の販売を呼びかけた内容を投稿したのであれば、「公然、あおり、又は唆した」と判断されると考えられます。

覚醒剤などの違法薬物に関わる刑事事件というと、実際に違法薬物を使用したケースや、違法薬物を所持したケースが思い浮かびやすいですが、今回の事例のように、販売を呼びかけたという容疑で逮捕されることもあります。
薬物事件に限らず、刑事事件では、イメージとは異なる行為と犯罪が結びつくこともありますので、早い段階で弁護士のアドバイスを聞くことがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、麻薬特例法違反事件などの薬物事件についてもご相談・ご依頼を受け付けています。
フリーダイヤル0120-631-881では、スタッフがお問い合わせを受け付けていますので、お気軽にお電話ください。

(事例紹介)外国籍のコカイン営利目的所持事件で実刑判決

2022-12-06

(事例紹介)外国籍のコカイン営利目的所持事件で実刑判決

~事例~

沖縄県那覇市のホテルで昨年6月、コカイン約1キロを営利目的で所持するなどしたとして、麻薬取締法違反などの罪に問われた、ブラジル国籍の無職の被告(25)に、那覇地裁(小野裕信裁判長)は22日、懲役5年、罰金150万円(求刑懲役8年、罰金200万円)の判決を言い渡した。
被告は違法薬物との認識はなかったと主張していたが、小野裁判長は認識があったと認定した。判決理由では、交際相手から違法薬物の回収役兼運搬役を引き受け、犯行に及んだと指摘。コカイン所持量が1キロを超えていることから「立場は従属的であることなどを考慮しても、実刑は免れない」と述べた。
(後略)
(※2022年11月24日12:26YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)

~コカインの営利目的所持~

今回取り上げた事例では、外国籍の被告がコカインの営利目的所持などによる麻薬取締法違反に問われ、懲役5年、罰金150万円の実刑判決を受けています。
コカインは麻薬の一種であり、麻薬取締法によって規制されている、違法薬物です。

麻薬取締法では、麻薬を「ジアセチルモルヒネ等」とそれ以外に分けて規制しています。
「ジアセチルモルヒネ等」とは、いわゆるヘロインのことを指します。
コカインとヘロインは別物ですから、コカインは「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」として麻薬取締法で規制されているということになります。

麻薬取締法第66条
第1項 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

今回の事例では、被告がコカインの営利目的所持などによる麻薬取締法違反に問われたと報道されており、この麻薬取締法第66条第2項に当たる麻薬取締法違反であると判断されたものと思われます。

~外国籍でも実刑判決~

今回の事例の被告は、外国籍ですが、麻薬取締法違反実刑判決を受けています。
刑事事件を起こしてしまったり、その容疑をかけられてしまったりすれば、外国籍の方であっても、日本人と同様、日本の刑事手続に則って捜査されることになります。
ですから、場合によっては逮捕・勾留によって身体拘束を受けながら捜査されることもあるでしょうし、起訴されれば刑事裁判を受けることもあります。
外国籍の方にとって、慣れない日本の刑事手続を受けていくということには大きな不安がつきまとうことになります。
特に、日本語に慣れていない方であればその不安はさらに大きなものとなってしまうでしょうし、逮捕・勾留による身体拘束を受ければ余計に心配になるでしょう。
そのため、外国籍の方が被疑者・被告人となっている刑事事件では、よりこまめなサポートが求められると言えるでしょう。

また、外国籍の方が実刑判決を受ければ、退去強制となります。
実刑判決の場合には、言い渡された懲役刑や禁錮刑を刑務所で受けてから、退去強制となります。
こうした手続への不安もあるでしょうし、それを避けるためにどういった活動ができるのかということも把握すべきといえますから、弁護士への相談を早めにしておくことがおすすめされます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、外国籍の方の刑事事件についてもご相談・ご依頼いただいています。
逮捕・勾留された外国籍の方へは、通訳人を手配して弁護士が接見へ行くことも可能です(初回接見サービス)。
まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

(事例紹介)自宅で大麻栽培 大麻取締法違反で逮捕

2022-11-29

(事例紹介)自宅で大麻栽培 大麻取締法違反で逮捕

自宅で大麻を栽培したとして、大麻取締法違反の疑いで逮捕されたという大麻取締法違反事件を基に、大麻取締法違反について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

新潟県柏崎警察署は、大麻取締法違反(栽培)の疑いで柏崎市に住む男を逮捕しました。
男は今年9月上旬頃に、柏崎市内の自宅でプランターに大麻の種をまいて育てたとして、大麻取締法違反(栽培)の疑いが持たれています。
警察によると、男の自宅にはプランター3個と育苗用のポット10個があり、調べに対し「自分で乾燥させて使うためにやった」とおおむね容疑を認めているものの、育てていた時期については一部否認しているようです。
(10月14日配信の日テレニュースの記事を参考にしたフィクションです。)

大麻取締法とは

大麻を、所持、栽培、譲り受け、譲り渡した場合、刑法ではなく大麻取締法によって処罰されます。
大麻は、大麻草及びその製品をいうものとされています。
しかし、大麻草の成熟した茎及びその製品、並びに大麻草の種子及びその製品は、この法律にいう「大麻」には当たらないとされています。
その理由としては、大麻草の成熟した茎や大麻草の種子には、中枢神経に作用し,著しい向精神作用を及ぼす「テトラヒドロカンナノビール」という成分がほとんど含まれていないということと、大麻の茎は麻織物に種子は七味唐辛子などに使用されているため、このような大麻を活用する必要性があることから規制の対象とはされていないようです。

大麻を栽培してしまうと

大麻取扱者以外の大麻の栽培は、大麻取締法3条で禁止されています。
大麻取扱者とは、都道府県知事の免許を受けた「大麻栽培者」や「大麻研究者」のことをいいます。
大麻取扱者ではないのに、大麻を栽培した場合の刑罰は、7年以下の懲役です(大麻取締法24条1項)。これに、営利目的があった場合は刑罰が加重され、10年以下の懲役又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金となります(同条2項)。
営利目的については、当事者の供述内容だけでなく、栽培されていた大麻の量や事件関係者の有無などから総合的に判断されます。

今回の事件では、営利目的についてはまだ不明ですが、自宅で大麻を育てており、この点についてはおおむね認めていることから大麻取締法違反で処罰される可能性は高いでしょう。

大麻取締法違反に強い弁護士

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弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料相談のご予約をフリーダイヤル0120-631-881にて24時間、年中無休で受け付けております。
まずは、お気軽にお電話下さい。
また、ご家族、ご友人が逮捕された場合は、初回接見サービスをご利用ください。

(制度紹介)薬物犯罪と刑の一部執行猶予 メリット・デメリットは?

2022-11-15

(制度紹介)薬物犯罪と刑の一部執行猶予 メリット・デメリットは?

前回の記事では、薬物法による刑の一部執行猶予を取り上げ、特に刑の一部執行猶予になる条件に注目しました。
今回の記事では、薬物法による刑の一部執行猶予のメリット・デメリットに注目します。

~刑の一部執行猶予のメリット・デメリット~

刑の一部執行猶予について薬物犯罪が他の犯罪と異なる点は、付けられる条件だけではありません。

薬物法第4条
第1項 前条に規定する者に刑の一部の執行猶予の言渡しをするときは、刑法第27条の3第1項の規定にかかわらず、猶予の期間中保護観察に付する。
第2項 刑法第27条の3第2項及び第3項の規定は、前項の規定により付せられた保護観察の仮解除について準用する。

前回の記事でも簡単に触れましたが、薬物法によって刑の一部執行猶予となった場合には、必ず執行猶予に保護観察が付けられることになります。
保護観察とは、保護司などと定期的な面談を行うなどして、生活改善や就労指導などを受ける処分を指します。
一般の刑の全部執行猶予や刑の一部執行猶予でも保護観察処分を付けることはできますが、必ず付くというものではありませんが、薬物法によって刑の一部執行猶予となった場合には、必ず執行猶予期間中に保護観察が付くことになります。

前回から今回の記事にかけて確認した、薬物法による刑の一部執行猶予の条件の緩和や、必ず保護観察が付くことといった特徴は、薬物犯罪の特徴に基づいています。
薬物犯罪、特に薬物の使用などは、中毒性が高く、再犯率が高いことは一般にも知られているところです。
日々のニュースでも、何度も覚醒剤や大麻を使用してしまった芸能人のニュースが流れることもあり、世間的にも「薬物犯罪は繰り返してしまう」というイメージがあるのではないでしょうか。
このような薬物犯罪の特徴から、薬物犯罪には再犯者が多く、前科を持っていたり、短期間で複数回検挙されていたりという人が少なくありません。
刑の一部執行猶予という制度は、元々再犯を繰り返してしまう人に対して、刑務所などの刑事施設で矯正教育を受けるということと、社会内で生活しながら処遇を受けることのどちらも経験することで再犯を防止しようという制度ですから、特に再犯率の高い薬物犯罪について、その特性に沿った条件・内容で制度を使おうとして、こうした特例が出来たのです。

刑の一部執行猶予を受けることで、刑事施設で矯正教育を受け、かつ出所後も保護観察処分による管理を受けることで、再犯をしないための環境づくりに資することができますし、単純に刑期の一部が執行猶予されることで、早く刑務所から出られるというメリットがあります。
刑務所に入れば、当然その間社会から切り離されて生活することになりますから、少しでも早く外に出て、社会生活をリスタートしたいと考える方は少なくないでしょう。

しかし、先ほど記載したように、薬物法による刑の一部執行猶予では必ず保護観察が付きますし、薬物依存の改善のための処遇も受けることが条件になっていますから、刑務所から出た後も相当期間の監視下に置かれ、国の影響力のもと過ごすことになります。
例えば、「懲役3年、うち1年を執行猶予2年」と仮定した場合、単に「懲役3年」であった場合には監視・管理される期間は3年ですが、「懲役3年、うち1年を執行猶予2年」の場合は、刑務所に入っている2年と執行猶予を受けている2年の合計4年、監視・管理されることになります。
「執行猶予」というとメリットの大きいことに思えますが、このようにメリット・デメリットがあるとも考えられるため、制度もよく理解しながら刑事手続に臨む必要があります。

特に薬物犯罪の場合、罰金刑が定められていない犯罪も多く、再犯が多いこともあり、刑事裁判になり、実刑か執行猶予かを争う事件も少なくありません。
こうした場合にどういった処分を目指すのか、どういった選択肢があるのかを理解した上で臨むことで、被告人の方の利益を守ることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、薬物犯罪の刑事裁判についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
まずは相談だけしたいという方のお問い合わせも受け付けていますので、お気軽にご相談ください

(制度紹介)薬物犯罪の刑の一部執行猶予が付く条件とは?

2022-11-08

(制度紹介)薬物犯罪の刑の一部執行猶予が付く条件とは?

前回の記事では、刑の一部執行猶予という制度をご紹介しました。
今回の記事では、薬物犯罪をした場合に刑の一部執行猶予が付く条件ついて注目します。

~薬物犯罪をした場合の刑の一部執行猶予~

前回の記事で確認した通り、刑の一部執行猶予が付けられる条件としては、刑法によって以下の条件が定められています。

刑法第27条の2
第1項 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
第1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
第3号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

しかし、実は、覚醒剤や大麻、麻薬、危険ドラッグなどに代表される薬物犯罪(薬物法第2条に定めるもの)については、刑の一部執行猶予が付けられる条件は、この刑法に定められている条件とは異なる条件になっています。
薬物犯罪に関する刑の一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」(通称「薬物法」)という法律で定められています。

薬物法第3条
薬物使用等の罪を犯した者であって、刑法第27条の2第1項各号に掲げる者以外のものに対する同項の規定の適用については、同項中「次に掲げる者が」とあるのは「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(平成25年法律第50号)第2条第2項に規定する薬物使用等の罪を犯した者が、その罪又はその罪及び他の罪について」と、「考慮して」とあるのは「考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第1項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが」とする。

少し分かりづらいかもしれませんが、薬物法第3条では、刑法第27条の2第1項に定められている刑の一部執行猶予の条件を緩和しています。
ここでは、薬物法に定められている薬物犯罪(薬物法第2条に定めるもの)を犯した者については、「3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第1項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」に刑の一部執行猶予を付けることができるとしているのです。
具体的には、薬物法で定められている薬物犯罪を犯した者については、刑法第27条の2第1項で定められている条件のうち、前科の有無(禁錮以上の刑に処せられたことがあるかどうか等)の条件がなくなっているのです。

つまり、薬物法に定められた薬物犯罪をした者については、刑法第27条の2第1項の条件に当てはまらなかったという者についても刑の一部執行猶予が付けられる可能性があるということになります。
なお、注意しなければならないのは、たとえ薬物法に定められている薬物犯罪をしていても、刑法第27条の2第1項に元々当てはまる条件であった場合には、刑法上の取扱いになります。
ですから、薬物法によって刑の一部執行猶予を付けられるのは、刑法第27条の2第1項に当てはまらない、かつ薬物法に定められた薬物犯罪をした場合ということになります。

こうして見ると、「薬物犯罪のみ刑の一部執行猶予の条件が緩和されているのはずるい」「薬物犯罪に対して甘い」と思われるかもしれません。
しかし、刑の一部執行猶予は、一定期間は刑務所に入り矯正教育を受け、刑務所から出所した後も執行猶予期間があり、そこで問題があれば再度刑務所に入ることになるというシステムになります。
さらに、次回の記事で詳しく取り上げますが、薬物法によって刑の一部執行猶予が付けられた場合には、執行猶予期間に必ず保護観察がつくという特徴もあります。
こうしたことから、薬物法によって刑の一部執行猶予が付けられるということは、出所後の執行猶予期間中に厳しく管理を受けるということになり、そこで問題があれば再度刑務所に行くことになりますし、さらに薬物依存改善の処遇を受けることも条件となっていますから、単に監視され管理される期間が長くなっているとも捉えることができます。
そのため、条件が緩和されていること=「薬物犯罪を優遇している」というわけではないのです。

刑事事件に関わる制度では、こうした特例があることもあります。
よく理解できずに刑事手続に臨んでしまい、適切な対応をすることができなくなってしまうことは避けなければなりません。
まずは自身の刑事事件で取られる手続や制度、見通しなどをきちんと理解していくことが大切ですから、早い段階で弁護士の話を聞いておくことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕・勾留されている方向けのサービスから、在宅捜査を受けている方向けのサービスまでご用意しています。
ひとまず弁護士の話を聞いてみたいという方でもお気軽にご利用いただけますので、まずはお問い合わせ下さい。

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