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覚せい剤の尿検査を拒否し強制採尿

2019-08-09

覚せい剤の尿検査を拒否し強制採尿

~ケース~
Aさんは覚せい剤を使用し、兵庫県県神戸市内の繁華街を飲み歩いていました。
そうしたところ、警察官がAさんにつき、薬物使用者に特有の挙動を認めたため、職務質問を行いました。
Aさんは、腕の注射痕を見せることや尿検査を頑なに拒否したため、警察官らが4~5時間にわたって説得を続けました。
ですが、それでもAさんは要求に応じなかったことから、ついに強制的に尿を採取することになりました。(フィクションです)

~薬物使用の疑いをかけられるとどうなるか?~

薬物使用の被疑者が検挙されるきっかけは様々です。
日本における刑事手続は任意捜査が原則なので(刑事訴訟法第197条1項但書)、警察官が薬物使用の疑われる被疑者を見つけた場合、通常は説得を重ね、尿を任意提出するよう求めます。
ただ、「尿がでない」という弁解をするなどし、尿を提出しない被疑者も当然存在するので、このような場合には、強制の処分により尿を取得することになります。

~どこまで説得が許されるのか~

ケースでの警察官らは4~5時間にわたって説得を続けていますが、このようなことは許されるのでしょうか。
説得と称してAさんを足止めした場合は、実質的に身体拘束処分である逮捕がなされていたとして、任意捜査の限界を超え違法と判断される場合があります。
問題となってくる犯罪と嫌疑の程度、被疑者の態度、現場の状況により、その妥当性が判断されるでしょう。

~採尿令状について解説~

裁判官が発する令状により、強制的に個人が所有する物を押収したり、事件現場の検証を行ったりすることがあります。
これと同じく、令状によってAさんの尿を強制的に取得し(強制採尿)、その鑑定を行うことにより、Aさんの覚せい剤使用を立証することが考えられます。
Aさんの体内にある尿を強制的に採取することになるので、そのような捜査方法が果たして適正であるのか、という議論もあります。
この点について、最高裁は、厳格な条件(たとえば医師が行わなければならない)のもと令状により適法に行い得る旨を判示しています。

強制採尿を許す令状が発付されると、病院に連行され、医師の手によって強制的に尿を採取されることになります。
採取された尿から覚せい剤の使用を裏付ける成分が検出されれば、そのまま覚せい剤使用の疑いで現行犯逮捕されると考えられます。

覚せい剤使用罪の法定刑は重く、10年以下の懲役となっています。
罰金刑が予定されていないので、有罪判決が出ると、懲役刑が言い渡されることになります。
つまり、執行猶予が付かなければ即実刑になる、ということです。
そのため、覚せい剤使用罪により起訴されてしまった場合は、執行猶予付き判決の獲得に向けて行動することが重要です。

~逮捕後の弁護活動~

覚せい剤使用事件につき、早期の身柄解放の実現は困難が予想されます。
また、起訴される可能性も高いです。
起訴されてしまった場合には、保釈が認められる可能性があるので、保釈保証金の準備など、保釈の実現に向けた活動を行います。

また、より軽い量刑の判決を獲得するための活動として、「贖罪寄付」を行うことや、再犯防止に向けた治療を受ける用意をすることが考えられます。

まず、被害者のいる犯罪(たとえば傷害罪)においては示談を成立させることが重要ですが、覚せい剤使用罪は特定の被害者が存在するわけではありません。
そのため、上記のような示談はできない、ということになりますが、その代わりに、弁護士会などの団体に寄付をし、反省の意思を示すことが考えられます。
これを「贖罪寄付」といいます。

次に、再犯のおそれが高いと判断される場合には、厳しい判決が予想されます。
そのため、信頼できる身元引受人を確保したり、依存症治療を計画したりし、覚せい剤使用を繰り返さないよう環境整備がされていると主張することも重要です。

一方で、覚せい剤事件では、ときに捜査が行き過ぎて違法なものとなる場合があります。
たとえば、逮捕状もないのに被疑者の行動を長時間制限する、必要性が高くないにもかかわらず強制採尿を行う、などが考えられます。
こうした捜査により得られた証拠を用いて被告人を有罪にすることは許されないとして、採尿された尿やその鑑定書を証拠としないよう訴えるべき事案もあります(違法収集証拠排除)。
このような活動を通じ、よりAさんにとって有利な判決の獲得を目指していくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような薬物使用事件の解決実績も豊富です。
ご家族が覚せい剤使用事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料

覚せい剤所持で現行犯逮捕

2019-08-04

覚せい剤所持で現行犯逮捕

~ケース~
Aさんは、覚せい剤と注射器をポケットに入れ、京都府京都市山科区内を飲み歩いていました。
1件目の飲食店で覚せい剤を使用した後、2件目の飲食店に向かっている最中、京都府山科警察署の警察官から職務質問を受けました。
警察官からは、「ポケットの中見てもいいか」と言われ、しぶしぶポケットの中身を出すと、覚せい剤と注射器が出てきました。
これがきっかけとなり、Aさんは覚せい剤所持の疑いで現行犯逮捕されました。(フィクションです)

~覚せい剤所持罪、覚せい剤使用罪について解説~

(覚せい剤所持罪)
覚せい剤をみだりに所持する犯罪です。
「所持」とは、覚せい剤に対する事実上の実力支配関係をいいます。
覚せい剤を自身が直接手にしている必要はなく、社会通念上本人の実力支配、管理の及ぶ場所に保管していれば足り、自宅に覚せい剤を置いている場合なども「所持」に該当します。
ケースでは、ポケットの中に覚せい剤を入れており、明らかに「事実上の実力支配関係」が認められるので、「所持」性が認められると考えられます。
覚せい剤所持罪につき有罪が確定すれば、10年以下の懲役に処せられます(覚せい剤取締法第41条の2第1項)。

(覚せい剤使用罪)
覚せい剤をはじめとする薬物事件においては、警察官から尿検査を求められることが非常によくあります。
尿やその鑑定書は、覚せい剤の使用を立証する極めて重要な証拠であり、陽性反応が出た場合は覚せい剤使用罪の疑いで逮捕されることも考えられます。
覚せい剤使用罪は、覚せい剤取締法第19条に違反して、覚せい剤を使用する犯罪です。
こちらも、覚せい剤所持罪と同じく、法定刑は10年以下の懲役となっております(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。
「使用」とは、覚せい剤を消費する一切の行為をいいます。
自身に注射、経口投与、吸入する行為が「使用」の典型例です。
通常の覚せい剤使用の動機は、「快感を得ること」ですが、動機はこれに限定されておらず、例えば、警察官に職務質問された際に、覚せい剤を隠滅する目的でとっさに飲み込む行為も「使用」に該当します。

覚せい剤所持罪も、覚せい剤使用罪も、法定刑はかなり重い部類に属します。
罰金刑が予定されていないため、執行猶予がつかなければ、懲役の実刑判決となって刑務所へ収容されるおそれがあります。
また、覚せい剤取締法違反行為の起訴率は高く、上記のケースにつき起訴される可能性は高いと思われます。
したがって、ケースの事件においては、早期の身柄解放、執行猶予付き判決の獲得が主な到達点になってきます。
もちろん、不起訴処分の獲得を目指せる事情(違法な捜査など)があれば、不起訴処分を目指すべきであることはいうまでもありません。

~早期の身柄解放を目指す~

被疑者が逮捕され、釈放されない場合、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致後、検察官は身柄を受け取ったときから24時間以内に被疑者の勾留を請求するか、釈放するか、あるいは起訴するかを決めます。
検察官が勾留を請求し、裁判官がその請求の妥当性を認めると、10日間の身体拘束を受けます。
さらにやむをえない事由があると認められるときは、さらに最長10日間(逮捕から数えて最長23日間)の身体拘束を受けることになります。
上記の「勾留」が行われるのは、勾留の要件である逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると認められたときです。
そこで、弁護人となった弁護士としては、そうした勾留の要件を満たさないことを主張して勾留の当否を争うことになります。
勾留決定前であれば、検察官や裁判官に対して意見を述べ、早期の身柄解放を目指します。
勾留決定後であれば、準抗告などの不服申し立てにより裁判官の判断が妥当でないことを指摘し、勾留決定の取消しによる身柄の解放を目指します。

~執行猶予付き判決の獲得に向けた活動~

起訴されて以降は、保釈により社会に戻ることができます。
保釈は起訴されたその日のうちにも請求することができ、その請求が認められた場合に保釈保証金を納付して身柄解放となります。
そのため、起訴される前から、ある程度の金銭や、起訴された被告人の身元を引き受ける身元引受人など、保釈に必要な準備をしておくべきです。

起訴された場合は、裁判においてAさんの更生の可能性を見られることになります。
ですので、Aさんが社会に戻っても薬物に手を出さずに生活しうることを、裁判所に納得してもらわなければなりません。
それに際して、Aさんを受け入れる場所(家庭や勤務先)、薬物依存症の治療プログラムを受ける用意があると、Aさんにとっても有利に働く可能性が高いです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件に熟練した弁護士が多数在籍しています。
ご身内の方が覚せい剤所持事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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大麻所持事件と執行猶予

2019-07-30

大麻所持事件と執行猶予

~ケース~
Aさんは福岡県宗像市で自動車を運転中、パトカーに停止を求められたので、停止し、職務質問に応じました。
質問中、Aさんがハンドバッグを不自然に抱え込んでいるのを不審がられ、中身を見せるよう求められました。
バッグを開けると、ガラスパイプが見つかったので、車内をもう少し見せてほしいと言われ、承諾すると、ダッシュボードから2グラムの大麻が見つかりました。
簡易検査の結果、陽性であったので、Aさんは大麻所持現行犯として福岡県宗像警察署逮捕されました。(フィクションです)

~大麻所持の罪について解説~

大麻取締法第24条の2第1項は、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する」としています。
「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自分が直接手にしている必要はなく、社会通念上本人の実力支配、管理の及ぶ場所に保管していれば足ります。
自宅に置いてある場合、カバンに入れている場合はもちろん、勤め先の医院薬局内においてある場合も「所持」に該当すると考えられます。

~今後Aさんはどうなるか?~

警察署に引致された後、犯罪事実の要旨及び弁護人選任権があることを告知され、弁解の録取を経て取調べが行われます。
そして、留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察庁へ送致されます。
検察官は、Aさんから改めて弁解を録取した後、取調べを行い、身柄を受け取ったときから24時間かつ逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決定します。
勾留請求は裁判官に対して行うものであり、Aさんは裁判所で勾留質問を受けることになります。
裁判官は、勾留決定を行うかどうかを検討し、勾留決定を出した場合Aさんは10日間勾留されることになります。
さらに、やむを得ない事由(たとえば捜査の遅延など)があると認められるときは、最長10日間勾留を延長されます。
検察官は、勾留の満期日までに、Aさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。

~大麻所持事件の捜査の特徴~

大麻所持事件に限らず、ケースのような薬物事件は、多くの関係者が存在することが見込まれ、入手ルート、入手先の背後にどのような組織があるか、など、捜査を遂げて明らかにすべきことがたくさんあります。
したがって、捜査の都合上、身体拘束が長引く傾向にあります。
身柄解放活動の一つとして、勾留決定に対する不服申し立て(準抗告)がありますが、以上の様な事情から、認容されにくいのも事実です。
一方、起訴後の保釈については、起訴前の身柄解放活動と比べて認められる見込みがあると言えます

上記の事情から、大麻所持事件における身柄解放活動は、基本的には保釈の実現に向けて重点を置くことになります。
もちろん、勾留の要件(逃亡の恐れ、罪証隠滅のおそれなど)を満たさないと考えられるときは、勾留前、あるいは勾留延長前から積極的に検察官や裁判官と交渉することも重要です。

~執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動~

執行猶予は飽くまでも言い渡された刑を猶予するものに過ぎないため、有罪となって前科がついたという事実には変わりありません。
とはいえ、刑の執行は見送られるわけなので、そのまま社会に復帰することができる点で有用な制度です。

薬物事件の初犯の場合、単に所持しただけといった単純な事案では、執行猶予付き判決がなされることが多いです。
そのため、起訴された場合は、執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動を展開します。
その際、判決を下す裁判所としては、Aさんが再度薬物犯罪に手を染めることを懸念するのが通常です。
ですので、執行猶予を付けても問題ない、と判断してもらうためには、Aさんがまた薬物に手を出さず、刑務所に行かずとも社会内で更生できるということを納得してもらう必要があります。
そのためには、信頼できる身元引受人を用意し、保釈中から薬物治療のプログラムを受けるなど、再犯防止に努めていることを示す必要があります。
弁護士のアドバイスを受けながら、執行猶予付き判決の獲得に向けた環境作りを行っていきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、大麻所持事件の解決実績も豊富です。
ご家族が大麻所持事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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薬物事件と一部執行猶予

2019-07-20

薬物事件と一部執行猶予  

東京都府中市に住むAさんは、警視庁府中警察署の家宅捜索を受け、覚せい剤を所持していたとして覚せい剤取締法違反(所持罪)で逮捕され、その後勾留を経て起訴されました。そして、Aさんの判決期日は、令和元年6月18日と指定されました。実は、Aさんは、平成31年10月1日に、刑務所を出所(覚せい剤取締法違反(使用)で(懲役)1年6か月間服役)したばかりでした。Aさんと接見した弁護士は、再犯防止の観点からも、一部執行猶予判決を獲得できないか検討しています。
(フィクションです)

~ 執行猶予とは ~

執行猶予とは、その罪で有罪ではあるが、言い渡された刑(懲役刑、罰金刑)の執行を一定期間猶予する(見送る)ことをいいます。そして、執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の2種類があります。今回は、そのうち一部執行猶予についてご紹介いたします。

~ 一部執行猶予とは ~

一部執行猶予は、言い渡された刑期のうち、一部を実刑とし、一部を執行猶予にするものです。
たとえば、薬物事件の場合、

被告人を懲役2年に処する。
その刑の一部である懲役6月の執行を2年間猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に処する。

などという判決が言い渡されます。

一部執行猶予は、執行猶予期間中、刑の執行猶予取消しによる心理的強制の下で、

社会内における再犯防止・改善更生を促すこと

を目的としています。

* 一部執行猶予は実刑である *

一部執行猶予は、実刑と全部執行猶予の「中間」と誤解されることもありますが、あくまで実刑の一部です。
つまり、裁判所(裁判官)としては、従前どおり、まず実刑か全部執行猶予のどちらが相当かを判断した上で、実刑を選択した場合に、全部実刑か一部実刑(一部執行猶予)かを選択できる選択肢が増えたということになります。

~ 一部執行猶予判決を受けるための要件 ~

では、薬物事件で一部執行猶予を受ける要件をご紹介いたします。

薬物事件を犯した者に対する一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「法律」)」に規定があります。一部執行猶予判決を受けるには次の要件が必要です(法律3条)。

1 薬物使用等の罪を犯したこと
2 本件で、1の罪又は1の罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
3 刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために「必要」であり、かつ、「相当」であること

なお、薬物使用等の罪については、他の犯罪と異なり、前科の要件は必要とされていません。つまり、

Aさんのような累犯前科を持つ方であっても、一部執行猶予判決の対象

となり得ます。

ただし、薬物事件においては、執行猶予期間中

必ず保護観察

に付されます。

* 薬物使用等の罪とは? *

法律2条2項には次の罪が挙げられています。

同項2号 大麻の所持又はその未遂罪
同項4号 覚せい剤の所持、使用等又はこれらの罪の未遂罪
同項5号 麻薬及び向精神薬取締法の所持罪等

~ 一部執行猶予のデメリット ~

確かに、一部執行猶予は実刑の期間(刑務所に服役する期間)が短くなるというメリットはあります。しかし、薬物事件では、上記のように必ず保護観察が付きます。保護観察が付くと、定期的に保護観察に通所しなければならないなど、公的機関の監視下に置かれることになります。しかも、執行猶予期間中、保護観察に付されるわけですから、

全部実刑の場合の服役期間より公的機関の監視下に置かれる期間が長くなる

というデメリットが発生します。つまり、上記の例でいうと、全部実刑の場合、満期出所でも2年間の刑期で済むところ、一部執行猶予の場合、実刑の1年6月に加え、2年間保護観察を付されるわけですから、合計で3年6月、公的機関による監視下に置かれることになります。しかも、保護観察所から言われた遵守事項を守らなければ、執行猶予を取り消され、再び
服役しなければならないおそれもあります。

一部執行猶予を選択肢に入れる場合は、こうしたデメリットも考慮して検討しなければなりません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。薬物事件での一部執行猶予獲得をご検討中の方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

保釈中に覚せい剤使用で逮捕

2019-07-15

保釈中に覚せい剤使用で逮捕

埼玉県草加市に住むAさんは、同区内の自宅アパートで、覚せい剤を所持し、使用した(覚せい剤取締法違反(所持罪、使用罪))疑いで埼玉県草加警察署逮捕、その後、さいたま地方検察庁の検察官に同罪で起訴されました。Aさんの私選弁護人はさいたま地方裁判所保釈請求し、許可されたことからAさんの家族から預かっていた保釈金を納付の上、Aさんは釈放されました。ところが、Aさんは保釈釈放中に知人女性宅を訪ね、その女性を誘って女性に覚せい剤を注射しました。後日、女性が草加警察署の警察官から職務質問を受けて事態が発覚。Aさんは覚せい剤取締法違反(使用罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 保釈とは ~

保釈とは、被告人(裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。「被告人」とは起訴され、刑事裁判にかけられた人をいいますから、あくまで保釈請求

起訴後

しかすることができません。

~ 保釈のメリット ~

保釈のメリットとしては以下の点が挙げられます。

① 精神的,肉体的負担の軽減
  留置場,拘置所暮らしの生活は,多大な精神的,肉体的負担を伴います。保釈により釈放されれば,これらの負担から解放されます。

② 様々な処分を免れる
  早期に釈放されることにより,会社の懲戒処分(解雇,減給等),学校の退学処分等を免れることができるかもしれません。

③ 家族が安心する
  何より,ご家族が安心されます。ご家族が留置場等へ面会に行く手間も省けます。

④ 裁判に向けた十分な打合せができる
  釈放されていますからいつでも弁護士に相談できるわけですし,何より落ち着いて、時間をかけて打合せを行うことができます。

~ 保釈の注意点 ~

保釈は、あくまで勾留の停止にすぎません(勾留の効力が消滅したわけではない)。また、メリットだけではありません。以下の点に注意する必要があります。

① 多額の保釈保証金が必要となる
  保釈保証金の額は、被告人の認否、事案の内容等に鑑みて裁判官(裁判所)が決めます(日産のカルロスゴーン社長が保釈保証金1億円を納付したことはニュースになりました)。決して安い金額ではなく、通常の簡易な事件でさえ100万円~150万円を準備する必要があります。

② 保釈条件を遵守する必要がある
  保釈を許可するにあたっては
・裁判所から呼び出された場合は必ず出頭する
・住居地を変更するには裁判所の許可を受ける
・被害者への連絡は弁護人を介する
・被害者、目撃者、共犯者などの事件関係者と接触しない
・薬物に近寄らない
などの条件を付けられます。全くフリーな状態で釈放されるわけではありません。

③ 条件を守らなければ保釈許可を取り消され保釈保証金を没収されて、拘束される
  決められた条件を守らなければ保釈許可を取り消され、納付した保釈保証金は没収され、再び留置施設等に拘束されるおそれがあります。

~ 保釈中に・・・~

上記のとおり、保釈中は裁判所から指定された条件を守って生活しなければなりませんが、近年、保釈中に①逃走する、②覚せい剤を使用する、という事件が話題となりました。

①について
 これは、神奈川県愛川町に住む男性が、刑務所に収容するため男性宅を訪れた検察庁職員らに包丁を示すなどして逃走したというものです。男性は控訴(1回目の裁判である第一審に対する不服申立て)を棄却され、第一審で言い渡された懲役3年6月の刑がすでに確定していた、ということですから純粋な保釈中ではありませんが、控訴申し立て後に保釈請求し、許可されたことから釈放されていたのです。なお、控訴審では男性は法廷に出廷する必要がありませんから、控訴棄却が言い渡されてもその日に収容されることはなく、言い渡しから数か月後に収容に至るという事態となったのです。この場合、保釈保証金は没収されます。

②について
 次に、覚せい剤取締法(所持罪、使用罪)で起訴されていた埼玉県飯能市の男性が、保釈中、覚せい剤を知人女性に使用したというものです。このケースは、第一審裁判中での出来事であること、刑を言い渡されておらず、かつ、確定もしていないことが①のケースと異なります。男性は再度逮捕されています。では、保釈金は没収されるのかといえば、没収されません。これは、すでに起訴された事件と新たに逮捕された事件とが全く別の事件であるからです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談初回接見サービスの予約受付を承っております。

薬物事犯と没収②

2019-07-10

薬物事犯と没収②

Aさんは,大阪府大阪市中央区にて覚せい剤を所持したとして、覚せい剤取締法違反(所持の罪)で逮捕されました。その後起訴されて大阪地方裁判所で裁判を受け,「懲役1年6月 3年間執行猶予 覚せい剤約0.5グラムを没収する」との判決の言い渡しを受けました。Aさんは判決後,弁護士に「没収」とは何か尋ねました。
 (フィクションです)

~ 前回のおさらい ~

前回の「薬物事犯と没収①」では,没収の意義や没収の対象物などについて解説いたしました。しかし,没収の対象物であるからとって,その全てが没収されるわけではありません。そこで,今回は,没収の要件や必ず没収しなければならない場合とそうでない場合などについて解説いたします。

~ 没収の要件 ~

没収の要件については刑法19条2項に規定されています。

刑法19条2項

 没収は,犯人以外の者に属しない物に限り,これをすることができる。ただし,犯人以外の者に属する物であっても,犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは,これを没収することができる。

= 犯人以外の者に属しない物 =

少し分かりにくいですが,まず,「犯人」とは,被告人自身のほか共犯者も含まれると解されています。したがって,まず,

① 犯人(共犯者を含む)自身の所有に属する物

没収できます。また,

② 誰の所有にも属さない無主物

も「犯人以外の者に属しない物」に当たりますから没収できます。しかし,所有者不明の場合は,未だ犯人以外の者に属しない物かどうか不明ですから没収することはできません。では,例えば,犯人が所有している抵当権付きの不動産の場合はどうでしょうか?この場合は,抵当権という第三者の担保物権が付いていますから,やはり「犯人以外の者に属しない物」とはいえず(つまり,犯人以外の者に属する物といえるから),没収することはできません。以上をまとめると,

犯人以外の者が,その物につき所有権・用益物権(地上権,地益権など)・担保物権(質権,抵当権など)を有しない場合

に限って没収できるということになります。

= 犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき =

「犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき」とは,その物につき,刑法19条1項各号に該当する事実があることを認識した上で取得したという意味です。この場合であれば,

犯人以外の者が所有権・用益物権(地上権,地益権など)・担保物権(質権,抵当権など)を有する物

で没収することができます。

~ 任意的没収と必要的没収 ~

これまで,没収の対象物や没収のための要件を解説してきましたが,前回ご紹介した「刑法19条1項」を再度確認していただければわかるように,条文には「没収することができる」と書かれてあります。つまり,没収しなくてもいい訳です。このように,裁判官の裁量で没収するかしないかを決められる没収のことを「任意的没収」といいます。例えば,交通事故を起こした自動車。これは,刑法19条1項1号の「犯罪行為を組成した物」に当たり,かつ,自動車の所有が運転者の物であれば没収の要件は満たしますが,通常,没収されることはありません。自動車は財産的価値が高く,懲役刑,禁錮刑,罰金刑に加えて没収まで科すとなるとあまりにも刑が重たくなると考えられますし,実際問題,没収するとしても多大な手間と費用がかかるからです。

これに対して,裁判官の裁量の余地がない没収のことを「必要的没収」といい,法律で規定されています。例えば,覚せい剤取締法41条の8第1項には

「第41条から前条までの罪に係る覚せい剤又は覚せい剤原料で,犯人が所有し,又は所持するものは,没収する。ただし,犯人以外の所有に係るときは,没収しないことができる。」

と規定されています。前段をご覧いただくと、「没収することができる」ではなく「没収する」ですから、必要的没収というわけです。このように,覚せい剤の所有の場合は必ず没収するとされています。

* 所持の場合は? *

所持の場合は,若干,ややこしいです。なぜなら,但書で「犯人以外の所有に係るときは,没収しないことができる」とされているからです。例えば,

Aさんが所持していた覚せい剤は実はBさんの物だったという場合

です。また,「犯人以外の所有に係るとき」には,犯人の所有に属するか第三者の所有に属するかが明らかでない場合も含まれると解されますから,例えば,

道端で拾った覚せい剤をAさんが所持していた場合など

は但書きケースに当たると思われます。このケースの場合に没収する場合は,検察官が別の手続を踏むことが必要ですが,それはまた機会を改めて解説いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件を起こしお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談初回接見サービスを受け付けております。

薬物事犯と没収①

2019-07-05

薬物事犯と没収①  

Aさんは,大阪府大阪市中央区にて覚せい剤を所持したとして、覚せい剤取締法違反(所持の罪)の疑いで逮捕されました。その後、起訴されて大阪地方裁判所で裁判を受け,「懲役1年6月 3年間執行猶予 覚せい剤約0.5グラムを没収する」との判決の言い渡しを受けました。Aさんは判決後,弁護士に「没収」とは何か尋ねました。
 (フィクションです)

~ はじめに ~

今回は,「没収」」という日頃聞き慣れない言葉について解説いたします。薬物事犯では特に重要な言葉ですので,ぜひ参考にされてください。

~ 没収とは ~

没収とは,物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる財産刑のことをいいます。
刑罰の種類について定めた刑法9条は,「死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする。」としており,没収を刑罰の一種としています。
ここでいう「主刑」とは独立に言い渡すことができる刑罰のことで,「付加刑」とは主刑が言い渡された場合にそれに付加してのみ言い渡すことができる刑罰のことをいいます。没収は付加刑ですから,判決で没収だけを言い渡すことはできず,必ず懲役や罰金等の他の刑罰と一緒に言い渡されます。

~ 没収の目的 ~

没収は刑罰の一種ですから,制裁的の意味合いがあることは間違いありません。しかし,それよりもむしろ,社会への危険・害悪の防止,犯罪組織への利得還元の防止など保安処分としての意味合いの方が濃いとも言われています。
国によって覚せい剤を没収してしまわなければ,再びそれを使うなどする人がいて社会に危険・害悪をもたらしかねないからそれを没収してしまおうというわけです。

* 押収との違い *

没収とよく混同される言葉として「押収」があります。「押収」とは,捜査機関が,対象者から任意で物の提出を受けたり,強制的に物を差し押さえたりする場合のことです。他方,「没収」は刑罰の一種で,裁判官しか言い渡すとこができません。また,「押収」は一時的に物の占有を取得したにすぎず,所有権を放棄しないかぎりのちのち還付(返却)されますが,「没収」は所有権を剥奪することなので永久的に手元に戻ってくることはありません。
没収」は法的には「押収」されていないものでも対象とすることはできますが,実務では,「押収」されているものに限り「没収」の対象としているようです。

~ 没収できる物 ~

では,没収できる「物」とはなんでしょうか?
これについては刑法19条1項に規定されています。

刑法19条1項 次に掲げる物は,没収することができる。
1号 犯罪行為を組成した物
2号 犯罪行為の用に供し,又は供しようとした物
3号 犯罪行為によって生じ,若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
4号 前号に掲げる物の対価として得た物

= 没収できる「物」とは =

「物」とは有体物をいい,動産のみならず不動産も含まれますが,利益や債権は含まれません。例外的に刑法以外の特別法によって有体物以外のものが没収の対象になる場合もあります。例えば,麻薬特例法と呼ばれる法律では,「薬物犯罪収益等」の没収の規定を定めており,薬物犯罪による収益等に当たるものであれば預金債権等の無体的財産も没収の対象となります。

= 1号(犯罪行為を組成した物) =

偽造文書行使罪における偽造文書,賭博罪における賭金,無免許運転における自動車など。

= 2号(犯罪行為の用に供し,又は供しようとした物) =

文書偽造の用に供した偽造の印章,殺人に用いた日本刀,住居侵入・窃盗のために使用した懐中電灯など。

= 3号(①犯罪行為によって生じ,若しくは②これによって得た物又は③犯罪行為の報酬として得た物) =

① 通貨偽造罪における偽造通貨,文書偽造罪における偽造文書など。
② 賭博に勝って得た財物,財産犯罪によって領得した財物など。
③ 殺人の依頼に応じて殺人を行ったことによって得た報酬金,窃盗幇助の謝礼として得た財物

= 4号(前号に掲げる物の対価として得た物) =

盗品等の売却代金,窃盗犯人が盗んだ現金で買ったものなど。

~ おわりに ~

今回は,没収の意義,没収の対象となる物について解説いたしました。没収の対象物であるからとって,その全てを没収できるわけはありませんし,できるとしても必ず没収するとは限りません。次回以降は,没収するための要件などについて解説いたします。

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薬物事件と執行猶予制度

2019-06-25

薬物事件と執行猶予制度

~ケース~
京都府京都市下京区在住のAさんは、3年前に覚せい剤使用の容疑で逮捕、起訴され、懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けていた。
Aさんは上記の有罪判決確定後、薬物更生プログラムなどを受講していたが、同プログラムに参加していた他の受講者に誘われ、覚せい剤に対する誘惑を断ち切れず、執行猶予期間内に再び覚せい剤を購入し、使用してしまった。
その後、Aさんは覚せい剤の使用が発覚し、覚せい剤使用の容疑で逮捕されてしまった。
しかし、京都府下京警察署の取調べ等に対しAさんは、再び覚せい剤を使用してしまったことに深く後悔し、真に薬物からの更生を目指したいと考えているという旨の供述をしている。

~刑の執行猶予について~

刑の執行猶予については、刑法25条1項に規定されています。同項では①前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者について、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金を受けたときに、情状により、刑の全部の執行を猶予できると規定されています。

Aさんは、3年前に覚せい剤の使用容疑で、懲役1年6カ月の有罪判決を受けています。懲役刑は「禁錮以上の刑」であるため、上記①には当たりません。更に、Aさんは刑を言い渡されてから長くとも3年しか経過していないことから、②にも当たりません。

もっとも、刑法25条2項は、仮に前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、①その刑の全部の執行を猶予されており、②1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、③情状に特に酌量すべきものがあるときについても、執行猶予判決をすることができると定めています。

まず、上記のケースのAさんについては、以前に執行猶予3年の判決を得ていることから、禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予された者(①)に当たります。
また、Aさんは、警察の取調べ等に対し、再び覚せい剤を使用してしまったことに深く後悔し、真に薬物からの更生を目指したいと考えている旨の供述をしています。この言葉どおり、判決前から再度薬物更生のための治療を徹底して受けていくことで、特に情状に酌量すべきものがあると評価される可能性があります(③)。

したがって、Aさんは、2度目の覚せい剤使用について、懲役1年以下の判決を受けることが出来れば(②)、再度の執行猶予判決が得られる可能性があります。
もっとも、初犯でも1年6カ月から2年程度の刑期が相場であるため、再犯で1年以下となることは稀です。
上記事例のような薬物の執行猶予期間中の再犯では、再度の執行猶予が付くことはまずありえないと言っても過言ではありません。

~一部執行猶予制度について~

平成28年の法改正により、刑の一部執行猶予判決を行うことが可能となりました。
例えば、「懲役2年6月に処する。その刑の一部である6月の刑の執行を3年間猶予する」という判決が言い渡された場合、懲役2年6月のうち、6か月部分については3年間執行が猶予されます。
つまり、2年間は刑務所に入らなければなりませんが、執行猶予が取り消されない限り、刑期が6か月短縮されると言うことができます。

この制度については、社会内での矯正を可能な限り取り入れるという目的があり、薬物事件における必要性を踏まえて創設されたものといえます。
上記の判決でいうと、一部執行猶予となった場合、本来より6か月早く刑務所から出て、早期に薬物依存症の更生プログラムを受けられるようになります。

また、一部執行猶予は、先ほど説明した再度の全部執行猶予よりも要件が緩くなっています。
たとえば、再度の全部執行猶予は「1年以下の懲役または禁錮」という限定がありますが、一部執行猶予は「3年以下の懲役または禁錮」となっています。
ですから、特に前科があるという方にとっては、再度の全部執行猶予よりも一部執行猶予の方がはるかに獲得しやすいと言えます。
上記制度によって薬物事件からの更生、再犯防止を目指すなら、ぜひ弁護士に相談してください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、覚せい剤を含む薬物事件のご相談のご予約、無料相談及び初回接見のご依頼を24時間受け付けております。
逮捕されてからでも、前科があっても、弁護士に相談したいと思ったら、0120-631-881までお気軽にお電話ください。

所持品検査でコカインが見つかり逮捕

2019-06-20

所持品検査でコカインが見つかり逮捕

~ケース~

警察官Pは、「福岡県福岡市南区周辺において薬物売買が行われている」との情報を得て、周辺をパトロールしていたところ、暴力団風の男Aを発見した。
Pは、が挙動不審な様子でPを見て逃走しようとしたことから、Aに対し職務質問を開始することとした。
Aは、Pの「ここで何をしているのか」等の質問に対し一向に解答しようとせず、任意での所持品検査にも応じようとはしなかった。
Aは、Pの再三の所持品検査の要求を拒み続け、「俺は帰る」と言ってその場を離れようとした。
そのため、Pは、Aの進路を妨害し、無理矢理Aのズボンのポケットに手を入れ、そこに入っていたコカインの袋を取り出した。
これによって、Aのコカインの所持が発覚し、PはAをコカイン所持の容疑で現行犯逮捕した。
(上記のケースはフィクションです)

~コカインについての刑事罰~

コカインには、覚せい剤と同じ様に神経を興奮させる作用を有しており、気分の高揚、眠気や疲労感がなくなったように感じさせるという効果を有しています。
コカインの乱用を続けた場合、幻覚等の症状が現れたり、多量摂取をしてしまうと、呼吸困難により死亡してしまう恐れがあり、コカインは大きな危険の伴う薬物であるといえます。

そのため、コカインの所持・使用・製造・輸出入・譲渡・譲受等の行為については「麻薬及び向精神薬取締法」によって厳しく処罰されています。
輸入・輸出・製造・栽培については、営利目的がなくとも、1年以上10年以下の懲役に処せられる可能性があります。

自己使用で営利目的のない所持の場合であっても、法定刑は「7年以下の懲役」と非常に重い刑罰となっています。
過去の量刑でみてみると、1年6か月~2年程度の懲役及び3年程度の執行猶予となることが多いようです。
そのため、コカインの所持等で逮捕された場合、出来るだけ早い段階に弁護士に相談・依頼し、適切な弁護活動をしてもらうことで、減刑を目指していくことが重要です。

~職務質問に伴う所持品検査~

覚せい剤コカイン等の薬物所持が疑われる場合、警察官にかばんやポケット内の所持品を出してくれるよう、所持品検査を求められることがあります。

職務質問については、警察官職務執行法2条1項に基づいてなされます。同法は所持品検査については規定していませんが、職務質問に附随するものとして認められています。所持品検査も職務質問と同様、原則として、相手方の同意がある(=任意)場合にのみ認められることになります。
そのため、これらを拒否したからといって、法的に処罰されることありません。

ただ、相手方の同意がなければ所持品検査が全く許されないとすると、職務質問の効果が上がらず捜査に支障が出る可能性があります。
そこで、最高裁判所は以下のように判断しています。

「捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される場合がある」

つまり、所持品検査の必要性や程度によっては、対象者の同意がなくとも許される場合があるということです。
もっとも、警察官が勝手にカバンを開けて中を探ったり、ポケットの中に手を入れたりすることは、もはや所持品検査の範疇にとどまらず許されない可能性が高いでしょう。
そのため、上記のケースにおいて、PがAのズボンのポケットから無理矢理コカインの入った袋を取り出した行為については、所持品検査として許容される程度を超えるものとして違法となると考えられます。
場合によっては、こうした違法な捜査により得られた証拠物が裁判から除外され、結果的に無罪につながる可能性があります。

以上のような主張を適切に行うには、法律の専門家である弁護士の存在が必須と言っても過言ではありません。
少しでも不安であれば、ぜひ一度お近くの弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士は、刑事事件を専門とした弁護士であり、所持品検査をきっかけとした逮捕取調べのご相談も受け付けています。
薬物事件についてお悩みの方は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください。
0120-631-881までお気軽にお電話ください。

初回法律相談:無料

覚せい剤事件のおとり捜査②

2019-06-10

覚せい剤事件のおとり捜査②

~ケース~

東京都八王子市在住のAさんは、覚せい剤取締法違反の疑いで警視庁八王子警察署逮捕されました。
その後、勾留により10日間拘束されたあと、覚せい剤取締法違反で起訴されてしまいました。
しかし、Aさんは警察による捜査がおとり捜査であって違法であったと主張しています。
というのも,Aさんは覚せい剤のいわゆる「売人」をしており,覚せい剤の取引に赴いたところ,取引相手は警察官であり覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されたという経緯があるからです。
(フィクションです)

~おとり捜査の適法性~

前回,おとり捜査の適法性について,①直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,②通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難であり,③機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に行う,という3つの要件を満たす場合には任意捜査として許容されるとした判例を紹介いたしました。
では,おとり捜査逮捕されたと主張するAさんがどうなってしまうのかをいくつかのパターンに分けて考えていきましょう。

~パターン①~

捜査員が積極的にAさんにコンタクトを取り,覚せい剤を購入したい旨の打診をした場合。

上記事例において,何らかの理由でAさんが他人に対して覚せい剤を販売する意思を持っていなかったとします。
この場合に,捜査員からAさんに覚せい剤の購入を打診することは,Aさんに覚せい剤譲渡という犯罪の犯意を誘発することになります。
このようなおとり捜査は犯意誘発型と呼ばれ、前回説明したとおり国家による犯罪の作出として許されないといえます。
そうすると,おとり捜査の結果押収した覚せい剤は違法収集証拠として扱われ、証拠能力が否定される、すなわち裁判で証拠として採用されない余地が出てきます。
その場合は、犯罪を証明する証拠に欠けることとなり、Aさんは裁判で無罪となる可能性が出てくるでしょう。

~パターン②~

Aさんが覚せい剤の販売を常習して繰り返していたところ,その情報を得た捜査員が覚せい剤を購入したい旨の打診をした場合。

このような場合はいわゆる機会提供型のおとり捜査であるため,適法な捜査であるとされる可能性が高いです。
Aさんは覚せい剤の販売を常習的に繰り返しており,捜査員による特段の働きかけがなくとも覚せい剤譲渡の犯罪行為を行っていたといえるでしょう。
また,覚せい剤の譲渡の場合,所持や使用と異なり,通常の捜査方法のみでは犯罪事実の証明が困難といえます。
このパターンでは,覚せい剤譲渡をしているという情報そのものは警察は得ている形になりますが,それだけでは譲渡の事実があったと証明することは困難です。
加えて,覚せい剤譲渡の場合には直接の被害者となる者はいません。
したがって,判例のいう3要件を満たしていることから、適法なおとり捜査として許容される可能性が高いでしょう。

~パターン③~

Aさんは覚せい剤の販売を常習して繰り返していたところ,その情報を得た捜査員が覚せい剤を購入したい旨の打診をした。
取引の際,Aさんは覚せい剤を持って来ていなかったため,捜査員が今すぐ持って来てほしい旨打診し,Aさんに覚せい剤を持って来させた場合。

平成16年の判決はこのパターンに似た事件でした。
当該事件では,大阪へ東京から運び人に大麻樹脂を持って来させたところを逮捕されたというものでした。
被告人側は「捜査員からの執拗な取引への働き掛けがあり,犯意誘発型である」と主張しましたが,働きかけの時点で被告人が大麻樹脂を売ろうと買い手を求めていたのであるから,おとり捜査として適法であると判示されました。

~おとり捜査で逮捕されてしまったら~

平成16年判決では,覚せい剤などの薬物犯罪においてはおとり捜査が認められる場合があるという旨判示されました。
しかし,おとり捜査が常に適法な捜査として認められるわけではありません。
たとえ平成16年判決が提示した3要件に該当しても,その他の事情から捜査として許容される範囲を超えているとして違法な捜査とされる余地はあります。
いくら捜査のためとはいえ、不必要に被疑者・被告人の人権を侵害してはならないからです。
また,おとり捜査を含めてどのような点が違法だったと主張するかによって,刑事裁判で主張が認められるかも異なってきます。
違法なおとり捜査があったことを正しく主張し,裁判で認めてもらうためには刑事事件の弁護経験の豊富な弁護士に弁護を依頼することをお勧めします。

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