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MDMAと少年
MDMAと少年
埼玉県秩父市の高校に通うA君(16歳)は、友人のB君から「これを飲むと楽しい気分になるし、勉強の集中力も上がる。」と言われ、錠剤を数錠もらいました。A君は、「人から薬を勧められるなんて、きっと怪しいものに違いない」と思い、B君に「これ何?」と聞きましたが、B君から詳しい答えは返ってきませんでした。そこで、A君はB君に「遠慮しとくよ。」と言いましたが、B君から「友達じゃないか。」「おれのほかにもみんな使ってるから飲んでみなよ。」などと言われ、「長年のB君やその友人らとの縁を切るわけにはいかない。」「仲間外れにされるのが怖い。」と思い、自宅に帰って錠剤2粒を服用しました。その翌朝、A君は気がつくと埼玉県秩父警察署にいました。昨晩、A君は自宅で突然暴れだし、両親から通報を受けた警察官により保護されたようです。A君の部屋からはMDMA3錠が押収され、A君は、麻薬及び向精神薬取締法違反(麻薬所持)で事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)
~ MDMAは恐ろしい薬 ~
MDMAとは、正式名称をメチレンジオキシメタンフェタミンという合成麻薬のことで、別名「エクスタシー」「罰(バツ)」「タマ」とも呼ばれています。
MDMAの服用により、覚せい剤に似たような興奮作用を覚えるほか、幻覚、不安、不眠、脳・神経の破壊、心臓・腎臓・肝臓の機能不全、記憶障害等を引き起こすと言われています。
厚生労働省のポスターには、
・小さい人間がいっぱいやってきて、剣で自分を刺し殺そうとする。
・路上で暴れ、病院につれていかれた。入院すると「暑い、暑い」と全裸になり、1ヶ月の興奮状態がつづき、「バカヤロー、部屋から出せ」と大声でわめき散らして食事を床に投げつけたり、医者などになぐりかかり、「自分は鬼になっている」と妄想に取りつかれてしまった。
・「MDMAを飲んだら眠れなくなってしまった。頭が回転しなくなり、気分が落ち込んでしまって、学校の先生の話が1割も頭に入らなくなってしまった。もう6ヶ月もたつのに一向に元に戻らない。つらくて仕方がない。死んだ方がましだ。」
などの使用者の体験談が掲載されています。
まずは、こうした声も参考に、薬物、MDMAの恐ろしさを実感することが大切です。
もちろん、MDMAを「所持」すること、「使用(施用)」することは麻薬及び向精神薬取締法という法律により禁止され、「所持」については
7年以下の懲役
または、営利目的で所持した場合は、
1年以上10年以下の懲役、又は1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金
という罰則が設けられています。
~ 少年と薬物事件 ~
もっとも、少年の場合、ただちにこれらの罰則が科されるのは通常考え難いです。
少年の場合、捜査機関に発覚すると、
発覚→逮捕(されない場合あり)→捜査機関での捜査→家庭裁判所送致→調査→少年審判
という流れに乗ります。
薬物事件の場合、事案の重大性からほぼ家庭裁判所に送致されると考えた方がよろしいかと思います。
ただし、「調査」の過程で、少年審判を開くまでもないと判断された場合は「不開始決定」を受けることが考えられますし、少年院送致、保護観察などの保護処分を受けさせるまでもないと判断された場合は「不処分決定」を受けることも考えられます。
少年院送致を受けた場合は少年院へ収容されることになり、保護観察を受けた場合は社会復帰は許されるものの、一定期間、保護観察所の監督の下で更生していくことになります。
薬物に手を染めてしまう少年については、その少年自身に問題があることはもちろん、その少年を取り巻く環境にも問題があることが多いと思われます。
そのため、「調査」では家庭環境、学校、友人関係などでの問題点を明らかにし、そこで現れた問題点を解決するべく、少年を取り巻く環境を整備していく必要があります。
その過程で、少年に更生の兆しがみえ、環境が整い、少年が再非行を犯すおそれがないと認められる場合は少年にとってよりよい結果を得られることができるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
大麻所持で逮捕
大麻所持で逮捕
~ケース~
大阪府大阪市阿倍野区に住むAさんは、窃盗の疑いで自宅を捜索されていた際、押し入れに隠していた大麻を発見されてしまいました。
大麻であることを確認された後、Aさんは、大麻取締法違反(所持)の疑いで大阪府阿倍野警察署に現行犯逮捕されてしまいました。
それにより、窃盗事件の証拠だけでなく、大麻等も押収されました。(フィクションです)
~大麻所持罪を解説~
大麻所持罪とは、その名の通り、大麻をみだりに所持する犯罪です(大麻取締法第24条の2第1項)。
「みだりに」とは、社会通念上正当な理由があると認められないことを意味します。
たとえば、「大麻栽培者」、「大麻研究者」が業務の一環として行う所持行為は、大麻所持罪に該当しません。
「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自宅の押し入れに大麻を保管する行為は、「所持」に該当します。
大麻所持罪につき、有罪判決が確定すると、5年以下の懲役に処せられます(大麻取締法第24条の2第1項)。
10年以下の懲役を定める覚せい剤所持罪に比べると法定刑は軽いと言えますが、覚せい剤所持罪と同じく、法定刑に懲役刑以外の刑種がありません。
したがって、起訴され、有罪判決を受けた場合、執行猶予がつかない限りそのまま刑務所に行かなければならないことになります。
~逮捕後の手続~
逮捕後、留置の必要があると認められるときは、逮捕時から48時間以内にAさんの身柄を検察へ送致します。
身柄を受け取った検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、釈放するかを決めます。
検察官の勾留請求に対し、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められるときは、さらに最長10日間勾留が延長されます。
~身柄解放活動を弁護士に依頼~
大麻所持罪に限らず、何らかの刑事事件を起こして逮捕されてしまった場合、身柄解放活動のタイミングがいくつかあります。
(勾留請求前)
逮捕された後、留置場に入れられ、検察へ送致されると、検察官が被疑者を勾留するか、あるいは釈放するかを判断するタイミングがあります。
弁護士としては、このときに勾留の要件を満たさないことを主張し、勾留請求をしないよう働きかけることが考えられます。
弁護士の主張が容れられれば、勾留されずに釈放されることが期待できます。
(勾留請求後、勾留決定前)
検察官が勾留請求をし、かつ、裁判官が勾留決定をした場合に初めて勾留されることになります。
裁判官に対しても、勾留の要件を満たさないことを主張し、勾留決定を阻止する活動が考えられます。
(勾留決定後)
勾留されてしまった後は、「準抗告」、「勾留取消請求」などの制度を通じ、勾留の取消しを求めることができます。
勾留決定に違法があった、あるいは、勾留の要件を満たさなくなった、ということが認められると、釈放されます。
また、裁判官の職権発動を促し、「勾留の執行停止」の実現に向けて活動することも考えられます。
(起訴後の保釈請求)
大麻所持罪においては、大麻の入手ルートなど、捜査によって解明しなければならないことが多いため、勾留となることが多く、身体拘束が長引きがちになります。
上記の身柄解放活動が功を奏さず、さらに起訴されてしまった場合は、保釈の実現を目指すことになります。
保釈が許される場合であっても、保釈保証金を納付した上で釈放されることになります。
保釈保証金を用意しにくい場合は、その立替を行う機関も存在します。
逃亡、罪証隠滅を図ったり、裁判所の付した条件(住居の制限など)に違反するなどした場合は、保釈を取り消されることがあります。
保釈が取り消された場合は、納付した保釈保証金の全部又は一部を没取されることがあります。
反対に、裁判が無事に終了すれば、納付した保釈保証金は返ってきます。
接見にやってきた弁護士と相談し、早期の身柄解放の実現に向けて行動しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、大麻所持事件についても相談いただけます。
ご家族が大麻所持事件を起こし逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
覚せい剤取締法違反で逮捕
覚せい剤取締法違反で逮捕
〈ケース〉
東京都渋谷区の代々木上原駅周辺で、Aさんは挙動不審であることを理由に警察官に職務質問を受けた。
その後も,Aさんは警察官の質問に対して要領を得ない応答をし,時々意識が朦朧とした様子も見せた。
そのため,警察官は覚せい剤使用の疑いが高いと判断し,その場でAさんの同意のもと所持品検査を行った。
その結果,Aさんの所持品から白い粉末入りのビニール小袋,注射器を発見した。
試薬検査の結果,覚せい剤の陽性反応が出た為,警察官はAさんを覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕した。
警視庁代々木警察署にて警察官がAさんの採尿検査をしたところ,検査薬に陽性反応が出たため,警察官は尿検査の結果を証拠として裁判所に通常逮捕令状を請求し,後日Aさんを覚せい剤取締法違反(使用)としても逮捕した。
(事例はフィクションです)
〈覚せい剤の所持、使用および譲渡の罰則〉
覚せい剤取締法は、覚せい剤(フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン)の所持、使用、譲渡、譲受等を禁止しています。
覚せい剤を所持・譲渡した場合の刑罰は,営利目的の有無で異なります。
覚せい剤の所持・譲渡について営利目的がない場合は10年以下の懲役になる(41条の2第1項)一方,営利目的がある場合は1年以上の有期懲役(上限20年)となります(同2項)。
また,後者は、懲役に加えて500万円以下の罰金刑も科される可能性もあります。
覚せい剤の使用についても,10年以下の懲役が科されます(41条の3第1項)。
通常,営利目的なく覚せい剤を所持・使用した場合,初犯であれば,懲役1年6ヵ月程度で執行猶予3年の処分になることが多い傾向にあります。
〈職務質問・所持品検査〉
〇警察官職務執行法(警職法2条1項)
「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、 若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」
端的に言えば,犯罪に関わっていると思われる人物に対して,警察官はその場で停止・質問することができるということです。
職務質問の内容として,身分証の提示を求められるほか,その場所にいた理由やどこへ向かうのかといったことを質問されます。
なお,職務質問は令状を必要とする強制処分(例として逮捕や捜索)ではありませんが,停止・質問する際に必要かつ合理的な範囲内であれば有形力の行使が認められます。
具体的には、相手の肩を掴んで引き留める行為が挙げられます。
実際は職務質問に伴って所持品検査が行われることが通常です。
本事例の所持品検査を直接規定した法令はありませんが,上記の警職法の職務質問の効果を上げるうえで必要かつ有効な行為であることから,先述の警職法2条1項で認められるとされています。
所持品検査には大きく分けて以下の4つの形態があります。
①衣服・所持品の外部を観察して質問する行為
②所持品の開示を求め,開示されたら点検する行為
③相手の同意がない時に,衣服・所持品の外部に触れる行為
④相手方の同意がない時に,所持品の内容を点検し,或いは,相手方の身体について所 持品の有無を点検する行為(身体検査)
特に③・④は所持品検査を受ける人が受けるプライバシーを一定程度制限する行為であるので,やむを得ない場合など,より厳しい条件の下で許容されます。
〈採尿検査の可能性〉
覚せい剤などの薬物を使用した疑いがある場合、採尿検査を行われることがあります。
採尿検査には、採尿検査を求められた人が任意で尿を提出する場合とそうでない場合があります。
任意での採尿・提出を拒否した場合,捜査機関は疑いの程度や被疑者の態度などにより強制採尿令状を請求・執行できます。
強制採尿令状の執行は,医師の手でカテーテルを用いて行われます。
この強制採尿は、覚せい剤などの使用行為の捜査・立証する為には極めて重要です。
もっとも、採尿を受ける人に身体的にも精神的にも大きな負担を強いるものであることから,やむを得ない場合にのみ裁判所が令状を発付して許可を与えることになっています。
〈覚せい剤の所持と使用〉
Aさんは覚せい剤の所持と使用という2つの罪で逮捕されています。
この場合,どのように刑罰が科されるのでしょうか。
覚せい剤の所持と使用の罪は併合罪(刑法45条)として扱われます。
この場合,「その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期と」します。
そのため,もし覚せい剤の所持と使用の両方が起訴されると、最長で15年の懲役が科すことが可能となります。
ただし、よほど事件が重大でない限り、それほど長期の懲役刑が科されることは稀でしょう。
覚せい剤取締法違反事件で逮捕された場合,身柄の拘束が長期に及ぶ可能性が高いです。
理由としては,覚せい剤の入手経緯を詳細に捜査する必要があることや、証拠となる覚せい剤自体が隠滅しやすいことなどが挙げられます。
そして,長期の身柄拘束を受けた場合,学校や仕事への復帰が難しくなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,覚せい剤取締法違反事件の経験豊富な弁護士による,身柄解放も含めた最善のアドバイスを受けることができます。
ご家族などが逮捕された場合、最短でお申込み直後,遅くともお申込みから24時間以内に弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。
刑事事件に関するご相談は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください。
初回法律相談:無料
違法捜査で不起訴や無罪に
違法捜査で不起訴や無罪に
~ケース~
Aさんは兵庫県尼崎市内の繁華街を歩いていたところ、薬物の使用をうかがわせる挙動が認められるということで、警察官から職務質問を受けました。
Aさんは所持していた鞄の中身を見せるよう求められましたが、これを頑なに拒否しました。
すると、しびれを切らした警察官数人がAさんを地面に倒して押さえつけ、鞄を無理やり奪って中身を全て路上に出しました。
その中から覚せい剤が見つかったことから、Aさんは覚せい剤使用の疑いで現行犯逮捕されました。
その後、兵庫県尼崎東警察署にてAさんの同意のもと採尿が行われ、鑑定により尿から覚せい剤の成分が検出されたので、その旨を明らかにする鑑定書が作成されました。(フィクションです)
~覚せい剤使用罪とは?~
覚せい剤取締法第19条は、覚せい剤製造業者が製造のため使用する行為(1号)、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合(2号)などを除き、「何人も、覚せい剤を使用してはならない」としています。
19条の規定に違反して覚せい剤を使用すると、10年以下の懲役に処せられます(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。
医師や研究者ではないAさんには、覚せい剤取締法第19条1号~5号の事由はないと考えられます
また、Aさんの尿から覚せい剤の成分が検出されているので、覚せい剤を使用したことは疑いがなさそうです。
~覚せい剤が違法な捜査により得られたら~
ケースの捜査には、その適法性に疑いがある点がいくつかあります。
Aさんは薬物の使用をうかがわせる挙動が認められるという理由で、職務質問を受けています。
この職務質問を開始したこと自体は適法と判断される可能性が高いと思われますが、職務質問は原則として任意に基づくものであり(警察官職務執行法第2条3項参照)、それに付随する所持品検査も同様に考えられています。
そして、対象者の同意がない所持品検査について、判例は「必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度」でのみ許容されるとしています。
ケースは、数人の警察官がAさんを地面に押さえつけて鞄を奪取し、その中から覚せい剤を発見してこれを押収した、というものです。
まず、Aさんは明確に鞄の中身を見せることを拒絶していることから、所持品検査を許容していたとは到底言えません。
次に、警察官としては、鞄を見せるよう説得し続けるなど、他により穏当な手段をとることができたはずです。
そうすると、警察官の行為は本件において相当とされる限度を超えていると言えます。
そして、覚せい剤の陽性反応が示された旨の鑑定書も、上記のような捜査がなければ得られなかった可能性があります。
以上から、本件の捜査は違法と評価される余地があるでしょう。
~捜査の違法を主張し、不起訴や無罪を獲得~
判例において、違法収集証拠排除法則という法律に明記されていないルールが認められています。
それによると、「令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合」においては、その証拠の証拠能力が否定されることがあります。
証拠能力が否定されると、どれほどその証拠が有力な価値を有するものであっても、裁判で証拠として用いることができません。
そのことを懸念した検察官としては、有罪を立証するに足りる証拠が他にないとして不起訴処分を行う可能性があります。
そこで、弁護士の活動として、検察官に対して上記理由から不起訴処分をするよう働きかけることが考えられます。
また、もし起訴された場合は、同様の理由で裁判官に無罪判決を下すべきだと主張することが考えられます。
~まずは、弁護士と相談しましょう~
薬物事件の捜査においては、捜査に違法があるという理由で、不起訴処分や無罪判決がなされることがあります。
覚せい剤使用事件につき、捜査の適法性に疑問がある場合は、弁護士から違法収集証拠排除法則の適用の可否について説明を受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚せい剤使用事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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大麻と捜索・差押え~USBメモリの差押えの可否
大麻と捜索・差押え~USBメモリの差押えの可否
福岡県北九州市在住のAさんは、福岡県八幡西警察署の警察官に大麻を有償譲渡しているとの疑いをかけられていました。そんな中、Aさんは自宅にいたところ、突然、八幡西警察署のガサ(捜索・差押え)を受けました。そして、Aさんは、大麻の取引に関する情報が記録されている、との理由で仕事で使うUSBメモリなどを押収されました。Aさんは、押収されたUSBメモリに大麻取引に関する情報を記録していた記憶はなく、それがないと仕事にならないため、一日でも早く還付してほしいと考えています。そこで、Aさんは、どうすればいいか薬物事件に関する知識、経験豊富な弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)
~ ガサ(捜索、差押え)の基本 ~
捜索とは、一定の場所・物・人の身体に対して、人・物の発見を目的としてなされる強制処分、差押えとは、物の占有を強制的に取得する処分、をいいます。
刑事訴訟法218条1項は、この捜索・差押えについて
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる・・・・・。(一部省略)
と規定しています。
捜索はプライバシー権、差押えは、財産権を侵害する行為ですから、その行為をためには、不当・違法な権利侵害を防止するため、予め発せられた裁判官の令状を必要としているのです。
捜索と差押えの許可状(令状)が別々に発せられることは少なく、一括して捜索差押許可状とうい令状が発せられるのが通常です。
~ 令状の基本 ~
また、裁判官の発する令状があるからといって、何から何まで差押えていい、というわけではありません。
刑事訴訟法218条1項には
犯罪の捜査のため必要があるとき
と記載されていますから、差押えられるものは、
犯罪(被疑事実)と関連のあるもの
でなければなりません。
また、令状を請求する捜査機関は
差し押さえるべき物、捜索すべき場所
などを特定して令状を請求しなければならず、令状を発布する裁判官も、これらの事項を記載した令状を発付しなければなりません。
~ 電磁的記録と電磁的記録媒体の差押え ~
ところで、差押えの対象は有体物であって、電磁的記録、すなわち、電子データのような無体物は差押えの対象ではありません。他方で、これを記録する電磁的記録媒体(USBメモリなど)は有体物であり差押えの対象です。
ただ、こうした電子データを記録した電磁的記録媒体は、実際に中身を確認しなければ、本当に犯罪に関係のある情報が記録されているかどうかわかりません。
そこで、差押えの現場で、電磁的記録媒体の内容を確認できない場合に、犯罪(被疑事実)との関連性の有無にかかわらずこれらを包括的に差押えることができるかどうかが問題となります。
この点、最高裁判所(最決平成10年5月1日)は、パソコン、フロッピーディスクなどの電磁的記録媒体の差押えの場面に関し、
・被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性
・そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは情報を破損される危険
の2つの要件を挙げ、これらの要件を満たす場合は電磁的記録媒体の中身を確認することなく差押えることも許されるとしています。
~ 還付のための法的手段 ~
よって、こうした要件が認められない場合は、当該差押えは
違法
であり、直ちに捜査機関に還付を求めなければなりません。
こうした場合に、捜査機関に物の還付を求める方法としては、裁判所がなした捜索・差押えの裁判に対する準抗告の申し立てです。
この申し立てが認められれば、捜索・差押えが取り消され、捜査機関から差押えられたものが還付されます。
なお、捜査機関の差押えが違法でない場合でも、差押えの必要がないことを理由に、捜査機関に物の還付を請求することができます。
これらの手続きは薬物事件・刑事事件の経験、知識が豊富な弁護士にお任せください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。
覚せい剤使用事件で控訴
覚せい剤使用事件で控訴
東京都港区に住むAさん(23歳)は、覚せい剤の常習使用者であるBさんに「シャブ持っていないか。」「打ち方分からないから打ってくれないか。」などと頼み、Bさんに覚せい剤入り水溶液の注射器を右腕に打ってもらいました。後日、Aさんは路上を歩いていると、Aさんの行動に不審を感じた警視庁東京湾岸警察署の警察官から職務質問を受けました。そして、Aさんは尿の任意提出を求められ、これに応じたところ、尿から陽性反応が出たことからAさんは覚せい剤取締法違反(使用罪)の件で緊急逮捕されました。また、Bさんも同じ罪で逮捕されました。Aさんは逮捕、勾留を経て起訴され、裁判で懲役2年の実刑判決を受けたことから、これを不服として控訴しました。
(フィクションです)
~ 覚せい剤取締法(使用罪) ~
覚せい剤取締法には、覚せい剤の使用に関し、次の規定が設けられています。
覚せい剤取締法
19条(使用の禁止)
左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない
1号 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
2号 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が使用する場合
3号 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
4号 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のために交付を受けた者が施用する場合
41条の3第1項 次の各号の一に該当する者は,10年以下の懲役に処する。
1号 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
「使用」とは、覚せい剤等を用法に従って用いる、すなわち、「薬品」として消費する一切の行為をいいます。覚せい剤取締法は、覚せい剤を使用する客体を特に規定いません。ただ、通常は人体に使用する例が多いかと思います。人体に使用する場合、
自分で注射する場合でも、他人に注射する場合でも「使用」
に当たりますし、反対に、
他人に注射してもらう場合でも「使用」
に当たります。
また,使用方法は問いません。注射器で使用することが多いですが,直接も飲み込む経口投与,塗布,吸入,あぶりなどがあります。
~ 覚せい剤使用の量刑と控訴 ~
覚せい剤使用の場合、初犯であると「懲役1年6月 3年間執行猶予」の判決を言い渡されることが多いかと思います。
ところが、執行猶予中の場合はもちろん、執行猶予期間が経過したとしても、その後間もなくの犯行だった場合などは実刑判決を言い渡される可能性もあります。また、前回の罪が同種の罪(薬物事件)か異種の罪かによっても大きく異なるでしょう。
Aさんは実刑判決を言い渡され、それを不服として控訴しています。
控訴とは、簡易裁判所や地方裁判所から上級の高等裁判所へ上訴することをいいます。自分は無罪と考えているが有罪と認定された(事実誤認)、有罪であることは認めるが刑の種類や重さに不満があること(量刑不当)などを理由に控訴することができます。なお、控訴できるのは裁判を受けた被告人だけと思われている方もおられるかもしれませんが、訴追する側の検察官も控訴することができます。したがって、被告人側、検察側双方が控訴するというケースもよくあることです。
* 控訴期間には期限がある *
控訴期間は14日間です。そして、その期間の起算日は、判決言い渡し日の翌日です。
たとえば、平成31年4月1日に「懲役3年」との判決の言い渡しがあったとします。すると、控訴期間の起算日は4月2日ですからその日を含めた14日間が控訴期間ということになります。したがって、4月15日が控訴期限日で、その翌日の4月16日が確定日ということになります。
では、4月15日が土曜日だった場合はどうなるでしょうか?この場合、控訴期間の末日が土日祝日、12月29日から31日、1月2日、3日の場合は期間に算入しないとうい決まりがありますので、翌月曜日の4月17日が控訴期限日で、その翌日の4月18日が確定日となります。
~ 裁判(判決)の確定とは ~
確定とは、判決の内容に対しこれ以上不服申し立てをすることができなくなった状態のことをいいます。被告側、検察側が上訴することなく、上訴期間(14日間)が経過して裁判が確定した場合を「自然確定」といいます。なぜ、自然というのかといいますと、自然確定以外の事由、すなわち、当事者(被告人、検察官)の意思で確定することができるからです。つまり、被告人、検察官は上訴権を放棄したり、すでにした上訴を「取り下げ」たりすることができます。一方が上訴権を放棄したり、上訴を取り下げれば、他方が上訴権を放棄したり、上訴を取り下げた時点で裁判が確定します。
* 確定したらどうなるの? *
刑が確定すると、刑の執行がはじまります。死刑,懲役,禁錮,拘留の場合,身柄を拘束されている方は、そのまま収容施設で刑に服することになります。他方、在宅のまま刑が確定した場合は、検察庁から出頭の要請を受けます。そして、検察庁に出頭したのち、拘置所などに収容されます。ここで出頭しなかった場合は、収容状という令状によって強制的に身柄を拘束されます。執行猶予付き判決を受けた方は,確定日から刑の猶予期間がはじまります。
罰金,科料(1万円未満)の場合は,判決の言い渡しと同時に釈放されています。そして,刑が確定すると罰金,科料を納付しなければなりません。ただし,仮納付の裁判がついた場合は,刑の確定を待たずとも,罰金,科料を納付することができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。
大麻共同所持で即決裁判
大麻共同所持で即決裁判
東京都小金井市で同棲していたAとBは,自宅において大麻を所持していたとして,警視庁小金井警察署の警察官は,AおよびBを大麻取締法違反(共同所持)の疑いで逮捕した。
Aの家族は,薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。
~近年の大麻取締法違反事件の増加~
近年,若年層を中心とした大麻の蔓延が一種の社会問題と化しています。
犯罪統計や司法統計などを見ても,ほとんどの犯罪が認知件数や公判請求数を減少させているのに対し,大麻取締法違反事件は近年逆に増加傾向を見せているのです。
本件Aも,この大麻取締法違反(共同所持)により,逮捕されてしまっています。
大麻取締法は,3条1項において,「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない」と規定し,大麻の「所持」を禁じています。
そして,これを受けて24条の2第1項は,「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する」と,罰則を定めています。
本件では,上記法の罰則の存在から,大麻所持での逮捕に至っていることになります。
もっとも本件のように,(捜査官の捜索差押え等に基づき)共同で住んでいる自宅から大麻が発見された場合,一方が他方の個人所持だという弁解がされることがあります。
そして,共同所持しているかどうかは微妙なケースも存在し,あくまで大麻取締法上の「所持」たる管理・処分権が一方に(例えば本件であればAに)認められなければ,あくまで大麻は個人の単独所持に留まることになる可能性があります。
共同所持が認められるかどうかは,本件のような同居・同棲の生活実態等を具体的に把握しなければ判断できないといえるでしょう。
~薬物事件における即決裁判手続の利用 ~
逮捕されてしまった場合,上記のように所持を否認(=犯罪自体を否認)することも考えられます。
もっとも,共同所持の犯罪事実を争わない場合には,即決裁判手続を利用するなど,早期に刑事手続・裁判から解放される方策も検討に値するでしょう。
平成16年に改正(18年施行)により加わった即決裁判手続は,
・「検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。」(刑訴法350条の16第1項本文)
と規定し,主に薬物事件などを想定して,迅速・簡易な裁判手続を導入しました。
即決裁判による場合,「懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の全部の執行猶予の言渡しをしなければならない」(350条の29)とされ,罰金刑以外は,必ず刑の全部が執行猶予となることが保障されることになります。
このような即決裁判手続の利用もあり,大麻取締法違反事件では公判請求(=起訴)された事件の9割近い事件が,執行猶予付きの有罪判決で終わっていることも事実です(平成29年対象の司法統計等参照)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,大麻取締法違反事件を含む薬物事件にも力を入れている刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族等が大麻取締法違反(共同所持)事件で逮捕されてしまったという一報を得た方は,早急に24時間対応の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までお電話ください。
刑事事件専門の弁護士による初回接見など,弊所が提供するサービスを分かりやすく一からご案内させて頂きます。
おとり捜査で逮捕
おとり捜査で逮捕
~ケース~
神奈川県横浜市港北区在住のAさんは、区内で覚せい剤の売人をしていました。
Aさんは、「覚せい剤を2グラム売ってほしい。3日後の午後2時に大倉山駅のトイレで金を用意して待っている。」という電話を受けました。
Aさんは、3日後電話で指定されたトイレに行くと、数人の警察官が中に待機しており、Aさんはその場から逃げようとしたがその場にいた警察官らに進路を塞がれ、そのまま覚せい剤所持の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは、神奈川県江北警察署に留置され、「そもそも電話してきたのは警察官である。このようなおとり捜査は違法である。」と主張している。
その後、Aさんは刑事事件に強い弁護士に接見を依頼することに決めました。
(上記の事例はフィクションです。)
~おとり捜査とは~
おとり捜査については、法律上規定された概念ではなく、明確な定義があるわけではありません。一般的には、捜査機関や捜査協力者などが、身分やその意図などを隠して、対象者に犯罪を行うように働きかけたり、犯罪を行う機会を提供し、実際に対象者が犯罪行為を行ったところを検挙するという捜査手法のことを指します。このようなおとり捜査は、直接的な被害者がおらず、密行性が高く通常の捜査では検挙が難しい薬物犯罪などで主に用いられることになります。
おとり捜査には、「機会提供型」と「犯意誘発型」の二つの類型に分けることができると考えられています。
機会提供型のおとり捜査は、もともと犯罪を行う意図を持っていた者に対し、捜査機関等が犯罪を行う場所や機会を与えるという捜査手法です。
他方、犯意誘発型のおとり捜査は、そもそも犯罪を行う意図が無い者を捜査機関等がそそのかして犯罪を行わせるという捜査手法をいいます。
おとり捜査は上記のように法律の規定がないことから、「強制の処分」に該当しない範囲でのみ行うことができます。
「強制の処分」に当たらないといえる場合には、裁判所の令状などを得ることなくおとり捜査を行うことができることになりますが、無制限におとり捜査を行うことができるというわけではなく、あくまで任意捜査の範囲内でのみ適法となります。
おとり捜査の適法性が問題となった事案において、最高裁は「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである」としています(最決平16年7月12日)。
上記の最高裁判例によると、少なくとも覚せい剤所持といった薬物犯罪においてなされる「機会提供型」のおとり捜査については任意捜査として適法となると判断しているといえます。
上記の事例では、Aさんは以前から覚せい剤の売人をしており、覚せい剤を売る意思を当然に有していたといえることから、警察官はAさんに対し覚せい剤の所持(又は譲渡)の機会を提供したに過ぎず、機会提供型のおとり捜査ということになります。
そのため、上記の事例のおとり捜査については、判例上適法であると判断される可能性が高いです。
仮に、違法なおとり捜査が行われた場合には、そのような捜査によって押収された証拠品は違法収集証拠として証拠能力が認められず、裁判で使うことができなくなる可能性もあります。
そのため、おとり捜査で逮捕されてしまった場合には、速やかに刑事事件を専門に扱っている弁護士に相談することが必要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
ご自分やご家族の受けたおとり捜査が違法捜査なのかどうか、専門家である弁護士に相談することができます。
初回無料法律相談のご予約受付や、初回接見サービスのお申込み受付を24時間いつでも行っていますので、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
現行犯逮捕で大麻押収
現行犯逮捕で大麻押収
埼玉県ふじみ野市に住むAさん(55歳)は、仕事を終え帰宅途中、警察官から職務質問を受けました。Aさんは、警察官からポケットの中など全て見せるよう。所持品検査を求められました。Aさんは、ズボンのポケット内に大麻を入れていたことからこれを拒否しましたが、警察官から「拒否するなら令状持ってくるけど?」と言われました。そこで、Aさんは渋々、ポケットの中から大麻を取り出し、警察官に提出しました。警察官の検査の結果、大麻であることが判明したため、Aさんは大麻取締法違反(所持罪)の現行犯で埼玉県東入間警察署に逮捕されてしまいました。なお、大麻はその場で差し押さえられました。逮捕の通知を受けたAさんの妻は、薬物事件に強い弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
捜査機関が対象者から強制的に物を領得することは、対象者の人権(プライバシー権)を侵害するおそれの大きい行為であることから、事前に裁判官のチェックを経て裁判官が発する令状を取得し、その令状に戻づいて行われることが原則です。
しかしながら、捜査の現場では、令状取得の手続を行う余裕がない場合があります。特に、薬物事件では、薬物の差押に裁判官の令状を常に必要とすると、容易に薬物などを処分されるなどの罪証隠滅行為が図られ、その結果、真実の発見、追及という刑事訴訟法の目的を達せられられなくなるおそれが生じてしまいます。そこで、刑事訴訟法では、
令状によらない差押え、捜索、検証
を認めています。
~ 令状によらない差押え、捜索、検証 ~
令状によらない差押え、捜索、検証は、刑事訴訟法220条に規定されています。以下、本件と関係のある規定を抜粋いたします。
刑法220条1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第199条の規定(逮捕状による逮捕)により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があると認めるときは、左の処分をすることができる。(以下、略)。
1号 略
2号 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること
3項
第1項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第199条の規定(逮捕状による逮捕)により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があると認めるとき」とされているため、令状によらない差押え、捜索、検証をするか否かは完全に捜査機関の判断に委ねられています。3項を見ていただければお分かりのように、捜査機関が逮捕の現場で差押、捜索、検証をするには「令状を必要としない」とされています。
では、なぜ、このような規定が設けられたのでしょうか?
これついては、学説上、相当説と緊急処分説の2つの説が唱えられていますが、実務では相当説をとられています。
相当説は、逮捕の現場には逮捕事実に関連する証拠が存在する蓋然性が高く、これを差し押さえることが真実発見にも資することから、令状によらない差押え等を可能とする説です。
~ 「逮捕の現場」とは ~
逮捕の現場とは、逮捕した場所との場所的同一性、具体的には被疑者の身体及びその支配下にある場所をいいます。
路上で逮捕された場合は、まず被疑者の身体が捜索の対象となるでしょう。また、警察官に自宅のガサに踏み込まれた場合はその建物全体や附属するもの(支配が及ぶもの(小屋、車など)も対象となるでしょう。
なお、大麻を所持している場合は、持っている物が大麻かどうか確かめる必要があり、これが確認できない限り逮捕はできませんから、まず任意の提出を求められ、大麻と確認された時点で逮捕され、その後、大麻(のようなもの)として差し押さえられる、というのが一般的な流れかと思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
保釈中に逃亡し犯人蔵匿教唆罪?
保釈中に逃亡し犯人蔵匿教唆罪?
~ケース~
大阪府大阪市天王寺区在住のAさんは、覚せい剤取締法違反の罪で大阪府天王寺警察署に逮捕・勾留され、後に起訴されてしまいました。
起訴後、Aさんが選任した弁護人の活動によって保釈決定がなされ、Aさんは保釈金300万円を納付して保釈されました。
しかし、保釈後のAさんは公判にも出頭せず、連絡を取ることも出来なくなってしまいました。
その後、警察がAさんの実家や友人宅を回ってAさんを捜索していたところ、友人BがAさんを匿っていたことが発覚し、Aさんは再び身柄を拘束されてしまいました。
友人Bは、警察の取り調べに対し、「俺は本当はAと関わりたくなかった。Aから強く頼まれたので仕方なく自宅に匿った」と供述している。
(上記の事例はフィクションです)
~逃走罪は成立しない?~
刑法97条(逃走) 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。
本条は、裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が、暴行や脅迫等の手段を用いることなく逃走する行為を罰するものです。
本条における「拘禁」とは、身体の自由の拘束をいいます。例えば、刑務所で作業に従事している服役者等を指します。
もっとも、保釈中の被告人については、すでに身体の自由を拘束されているとはいえず、拘禁されているとはいえません。
そのため、上記の事例のように、保釈された被告人が逃走してしまい裁判にも出てこないという場合、逃走行為そのものが犯罪として処罰されることはありません。
保釈の際に納付することが義務付けられる保釈金については、判決後に被告人に返還されるのが通常です。
しかし、保釈中に逃亡した場合、裁判所は決定で保釈金を没収(正確には「没取」)することができます。
そのため、上記事例においては、Aさんの納付した保釈金300万円は没収され、Aさんは返還を受けることが出来なくなるおそれがあるでしょう。
~逃亡中の被告人をかくまうと~
刑法103条(犯人蔵匿等)
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
Aさんは、覚せい剤取締法違反で起訴されていることから、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に当たります。また、犯人を自宅に匿う行為については、「蔵匿」にあたります。
そのため、Aさんを自宅に匿った友人Bには、犯人蔵匿罪が成立することになります。
もっとも、犯人自身が逮捕や発見を逃れようとすることは無理もないと考えられていることから、犯人自身が自分自身を蔵匿する行為に本罪は成立しません。
ただし、犯人が他人をそそのかして自己を蔵匿・隠避させた場合については、判例上、犯人自身に本罪の教唆罪が成立すると考えられています。
その理由として、犯人自身の自己を蔵匿する行為が罪とならないのは、被告人の防御権の範囲内の行為であるからであり、他人を唆してまで目的を遂げようとする行為はそのような防御権の範囲を逸脱する行為であるということが挙げられています。
そのため、上記の事例における友人Bの「Aから頼まれたので仕方なく匿った」という供述が真実であれば、Aさんに犯人蔵匿教唆罪が成立すると考えられます。
また、公判への出頭要請を行うために来た警察官や裁判所職員に対し、暴行や脅迫を加えていた場合には、公務執行妨害罪が成立し、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処されるおそれがあります。
このように、保釈中に逃走した被告人について犯罪が成立する事案も考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件を専門とした弁護士であり、保釈のための弁護活動や、保釈後の公判準備活動など、ご相談いただいた時点で最善と思われる弁護活動を行っております。
刑事事件についてお悩みの方は、まずは弊所の弁護士までご相談ください。
0120-631-881までお気軽にお電話ください。
初回法律相談:無料
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