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覚せい剤所持事件の違法捜査

2020-12-31

覚せい剤所持事件の違法捜査

~ケース~

Aさんは覚せい剤の粉末の入ったポリ袋をズボン右ポケットに入れて西東京市内の繁華街を歩いていましたが、薬物中毒者に顕著な特徴が認められるという理由で警察官から職務質問を受けました。
警察官はズボン右ポケットの中身を出すよう求めましたが、Aさんは職務質問に協力せず、自らポケットの中身を出そうとはしませんでした。
長時間にわたる警察官の説得に対してAさんは黙ったままであり、警察官は「いい加減だしてくれよ。ポケットの中見るぞ。いいか」といい、右ズボンポケット内に手を入れ、中身を掴みだすと、覚せい剤と思われる粉末が出てきました。
その後、粉末は試薬による検査で覚せい剤と判明し、Aさんは覚せい剤所持の現行犯として警視庁田無警察署逮捕されてしまいました。
Aさんは任意の職務質問でポケットに手を入れられたことが非常に不満です。
(フィクションです)

~覚せい剤所持罪について~

覚せい剤取締法第41条の2第1項は、「覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者は、10年以下の懲役に処する」としており、比較的重い刑罰が予定されています。

~ケースの警察官の行動に問題はなかったか?~

確かに、職務質問は任意の処分です。
では、職務質問中、所持品検査を所持人の承諾なく行うことは適法でしょうか。
最高裁昭和53年6月20日判決によれば、「警職法二条一項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度において許容される場合があると解すべきである」と判示しており、適法なケースがありうると述べています。
ケースの警察官はAさんの承諾なくポケットを調べていますが、これが捜索に至らず、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、相当性を考慮して適法とされるケースがあるということになります。
ケースに類似した事件として、最高裁昭和53年9月7日判決があります。
そこでは、「警察官が、覚せい剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められる者に対して職務質問中、同人の承諾がないのに、上衣左側内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出した上検査した行為は、一般にプライバシー侵害の程度の高い行為であり、かつ、その態様において捜索に類するものであるから、職務質問に附随する所持品検査の許容限度を逸脱し違法である」と判示されています。

~職務質問に附随する所持品検査が違法だとして、刑事手続にはどのように作用するか~

「違法収集証拠排除法則」により、ポケットからでてきた覚せい剤の「証拠能力」が否定されることがあります。
証拠能力が否定されれば、その証拠は事実認定に用いることができません。
ただし、違法収集証拠として証拠能力が否定されるには、「証拠物の押収等の手続に、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる」ことが必要です。
要するに、単に手続に違法があるというだけで、直ちに証拠能力が否定されるわけではないということです。
上記昭和53年9月7日判決では、ケースに類似した態様の所持品検査をきっかけとして押収した「覚せい剤ようの粉末」につき、①所持品検査として許容される限度をわずかに超えたにすぎないこと、②警察官に令状主義を潜脱しようとする意図があったわけではなかったこと、③所持品検査に際し強制等のされた事跡も認められないことから、証拠能力を肯定しています。
上記ケースでも、覚せい剤の証拠能力は肯定される可能性が高いと思われます。

~捜査に納得いかない場合は、弁護士に相談~

もっとも、適正な手続で捜査が行われるべきことは当然のことです。
証拠能力が肯定、否定されるに関わらず、違法な捜査が行われた場合、弁護人は捜査機関への抗議を通じ、被疑者の利益のために、適正手続の実現に努めます。

ご自身の、またはご家族の覚せい剤所持事件に関して、捜査機関の活動に納得のいかない方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

偽薬物販売で詐欺罪

2020-12-24

偽薬物販売で詐欺罪

~ケース~

神奈川県逗子市在住の大学3年生のAさんは偽物の薬物を販売することでお小遣い稼ぎをしようと企てていた。
Aさんはインタ―ネットで販売用のページを作り,「Sを売ります」「リーフ売ります」と宣伝していた。
なお,実際に販売していたのは食塩を覚せい剤の結晶のように固めたものや,大麻草のように装ったお茶っ葉などであった。
Aさんから商品を購入したVさんが警察に被害届を出したことで発覚し,Aさんは詐欺罪の疑いで神奈川県逗子警察署逮捕された。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)

~Aさんの罪~

今回のケースで,Aさんは食塩とお茶っ葉を販売していたのですから販売行為自体は罪にならないでしょう。
しかし,Aさんはあたかも覚せい剤大麻を売っているかのように装って購入者を騙していたのですから詐欺罪となる可能性はあるでしょう。

詐欺罪は刑法246条によって「人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪が成立するためには

・被害者を騙すことによって
・被害者が騙されて錯誤に陥り
・騙された被害者が自分の意思で財物を処分し
・その財物の占有が加害者に移転することによって
・被害者に損害が発生した

という流れが必要になります。
今回のケースではAさんによる「Sを売ります」「リーフ売ります」といった表示が被害者を騙しているかどうかが問題となります。
覚せい剤は隠語として俗に「シャブ」「スピード」「S(スピードの頭文字)」などと呼ばれています。
また大麻草も「葉っぱ」などといった隠語で呼ばれていることがあるようです。
そうすると,いかにも薬物を販売しているサイトにおいて直接的ではなくとも隠語として使われている「S」「リーフ」といった言葉で相当な値段で販売していたということはあたかも薬物を販売していると購入者を騙しているといえるのではないでしょうか。
詐欺罪のいう欺罔行為の程度は通常の一般人に要求される配慮を尽くしても錯誤に陥る程度の欺罔が必要とされています。
違法薬物を販売しているようなサイトで隠語である「S」「リーフ」といった言葉が用いられていた場合,一般に要求される配慮を尽くしても,違法薬物を販売していると錯誤に陥ってしまうといえるでしょう。
そして,違法薬物の販売をしているとVさんが錯誤に陥って代金を払っているので詐欺罪が成立してしまうでしょう。

詐欺罪は10年以下の懲役刑のみが規定されていますので起訴されてしまった場合には刑事裁判が開かれることになります。
その為,詐欺罪の場合は被害弁償などの示談を通じて不起訴(起訴猶予)を目指していきます。
また,起訴されてしまった場合でも被害弁償などが済んでいれば執行猶予付きの判決となる可能性もあります。

~Vさんの罪~

一方,覚せい剤大麻を買おうとしていたVさんは罪に問われないのでしょうか。
覚せい剤取締法は覚せい剤の所持,譲渡,譲受を禁止しています(覚せい剤取締法41条の2)。
そして同条第3項によって未遂の処罰規定が設けられています。
大麻取締法にも同様の規定があります(大麻取締法24条の2)。
そのため,こういった事件では被害者の購入しようとした行為が罪に問われてしまうため,事件が発覚しにくいという特徴があります。
覚せい剤取締法は10年以下の懲役,大麻取締法は5年以下の懲役となりますが、未遂のため減刑される可能性が高くなります。
Vさんの弁護活動としては,未遂であることを主張し,その後の情状などによって起訴猶予や執行猶予付き判決を求めていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
詐欺事件や薬物を購入してしまいお悩みの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。

MDMA所持事件を起こし起訴 保釈に向けて活動する弁護士

2020-12-17

今回は、MDMAを所持していた疑いで起訴された被告人の保釈を目指す弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

Aさんは、自宅の食器棚においてMDMAを所持していた公訴事実により、埼玉地方裁判所へ起訴されてしまいました。
早朝にAさんの自宅にやってきた埼玉県朝霞警察署の警察官により、麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いで逮捕・勾留され、起訴された今も勾留されています。
Aさんは保釈を実現し、外に出たいと考えています。
どうすればよいのでしょうか。(フィクションです)

~Aさんにはどのような疑いがかけられているか?~

Aさんには、MDMAの所持罪が成立する可能性が高いでしょう。

麻薬及び向精神薬取締法第66条1項は、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持」する行為を禁止しています。
ジアセチルモルヒネ等とは、一般に「ヘロイン」のことを意味します。
MDMAは、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」に該当します。

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自宅の食器棚においてMDMAを保管する行為は、当然「所持」に該当します。
また、人から預かってMDMAを保管している場合であっても、「所持」に該当します。

MDMAの所持については、7年以下の懲役が予定されています。

起訴されたということは、Aさんに刑事罰が必要であると判断されたからです。
また、AさんによるMDMA所持行為を立証する証拠の収集も完了していると考えられます。

被疑者が犯罪を犯したことが証拠上明らかであっても、裁判にかけられない場合もあります(起訴猶予処分)。
しかし、MDMA所持罪をはじめとする薬物犯罪は、起訴される可能性が類型的に高いです。
捜査手続の適法性、収集できた証拠に問題がなければ、多くの場合、起訴されることになるでしょう。
検察官は、収集した証拠を用い、Aさんの犯罪行為を立証することになります。

~保釈の実現を目指す~

MDMA所持事件の身体拘束期間は長引く傾向にありますが、起訴された後、保釈が許される場合も多いです。
なお、起訴前、すなわち、被疑者の段階にあっては、保釈の請求を行うことはできません。
この場合は、「準抗告」や「勾留取消請求」など、保釈とは異なる身柄解放活動を実施する必要があります。

「保釈」とは、保釈保証金の納付を条件として、被告人に対する勾留の執行を停止して、その身柄拘束を解く裁判及びその執行を意味します。
裁判所が保釈を許す決定をすれば、保釈保証金を納付して、外に出ることができます。
保釈保証金の額は、犯罪の性質・情状、証拠の証明力、被告人の性質・資産を考慮し、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額が定められます。

~保釈を実現するメリット~

保釈を実現することができれば、身体拘束という負担から解放されます。
さらに、薬物依存の治療プログラムを開始することにより、再犯防止に努めていることをアピールできます。
勾留されている場合は、このようなプログラムは受けられません。

~執行猶予付き判決の獲得を目指す~

AさんがMDMAを所持していたことを立証できる証拠が存在する限り、有罪判決を免れることは極めて難しいと思われます。
ただし、有罪判決を受ける場合であっても、執行猶予付き判決を獲得することができれば、刑務所に入らずにすみます。

執行猶予付き判決を獲得するためには、裁判において、裁判官にAさんが再び薬物事件に手を染めないということを納得してもらう必要があります。

早期に弁護士を依頼し、アドバイスを受けながら有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族がMDMA所持の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

覚せい剤使用事件で執行猶予判決

2020-12-10

覚せい剤使用事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

千葉県君津市在住のAさんは、市内の飲食店に勤める会社員です。
Aさんは、夜勤が多いことや勤務時間が長いことに対しストレスを感じ、体調の悪い日々が続いていました。
ある日、深夜に常連客のBさんが来店し、Aさんが疲れているように見えたことから、知人のCさんを紹介しました。
Aさんは、Cさんから疲れの取れる薬と称した覚せい剤を無料で入手し、実際に使用したところ疲れが一気に消し飛んだような感覚を得ました。
しかし、その効果は長続きせず、再度覚せい剤を欲するようになり、Cさんから覚せい剤の購入を続けました。
Aさんは、会社も休みがちになり、勤務中も集中力がないことから解雇となり、自宅で引きこもる生活を送るようになりました。
その後、Cさんが覚せい剤取締法違反で逮捕されたことをきっかけに、Cさんの顧客であるAさんも千葉県君津警察署覚せい剤取締法違反逮捕されることになりました。
Aさんは、逮捕後に接見に来た弁護士に、執行猶予について詳しく聞くことにしました。
(フィクションです。)

【覚せい剤反応が出る時期】

覚せい剤の使用は、注射器で注射する方法や、火で炙って吸引する方法、口から飲む方法等がありますが何れにしても、採尿された尿から覚せい剤反応が出るのは、使用直後から使用後10日~2週間だと言われています。
Aさんの様に、覚せい剤を使用して1週間しか経っていないうちに採尿された場合は覚せい剤反応が出る可能性が高いといえます。
またAさんの様に、覚せい剤を使用した後に採尿された方からの法律相談でよくあるのが
Q1 覚せい剤反応が出たら逮捕されるのですか?
A1 覚せい剤使用事件は逮捕される可能性が高いですが、逮捕されるまでに逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれ等を消滅させることによって勾留を阻止できる可能性があります。
Q2 採尿されてから逮捕までの期間はどれくらいですか?
A2 尿の鑑定は科学捜査研究所で行われます。
   警察から科学捜査研究所に尿が持ち込まれて早くて2,3日、遅くても1週間~10日で鑑定結果がでますが、逮捕には裁判官の発付する逮捕状が必要になります。
そのため逮捕される時期は千差万別で、早く1週間以内、遅い場合は採尿から1ヶ月以上経って逮捕される場合もあります。

【覚せい剤で執行猶予】

覚せい剤で逮捕され、その後執行猶予判決を受けたという芸能人や有名人の報道を目にする機会があると思います。
覚せい剤に手を染めた原因としては、ストレスが溜まっていたことや軽い気持ちでやった等、様々な理由があります。
有名人や一般人を問わず、初犯で覚せい剤の使用や所持で逮捕後に起訴された場合、執行猶予判決となることが多いと言われています。
執行猶予とは、執行猶予期間中に他の犯罪を犯さなければ、判決の効力を生じさせない、つまり執行猶予期間を経過すれば刑の言渡し無かったことになります。
執行猶予期間中は、刑務所に服役することなく今までと変わらない生活を送ることができます。
ただし、覚せい剤取締法違反で執行猶予判決を受けた者の再犯率は60%を超えていると言われ、本人の努力だけでは覚せい剤を辞められないという問題が指摘されています。
執行猶予期間中に、病院や薬物依存症の患者をサポートする施設に通っている人もいますが、全員が通って再犯防止に努めているとは言えないのが現状です。

【覚せい剤事件の弁護活動】

覚せい剤事件で初犯の場合執行猶予判決が多いと言われていますが、何もしないで全員が執行猶予判決を受けれるとは限りません。
反省の態度が見えない場合や再犯防止に努めていると見えない場合には、初犯でも実刑判決が言い渡されることもあります。
事件毎によって弁護活動が異なりますが、弁護士のアドバイスに従って取り調べや公判の対応をすることで、執行猶予判決を獲得できる可能性が高くなります。
ですので、覚せい剤事件で執行猶予判決を獲得したい方は刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

千葉県の刑事事件で弁護士をお探しの方、ご家族やご友人が覚せい剤取締法違反で逮捕された方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

捜査機関の種類を解説

2020-12-03

今回は、刑事手続における捜査機関の種類について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

大阪市此花区に住むAさんは、自宅でMDMAを所持し、その薬理作用を得るため使用するなどしていました。
AさんがMDMAを所持・使用しているとの情報を得た麻薬取締官は、内偵を行い、捜索差押許可状の発付を得ました。
麻薬取締官は、Aさんの自宅に赴き、Aさんに捜索差押許可状を示した後、自宅の捜索を開始しました。
捜索の結果、Aさんの机の引き出しからMDMAの錠剤が発見されたので、これを押収された後、Aさんは麻薬及び向精神薬取締法違反(MDMAの所持)の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~MDMAの所持・使用行為の規制~

(MDMAの所持)
麻薬及び向精神薬取締法第66条1項は、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持」する行為を禁止しています。
ジアセチルモルヒネ等とは、一般に「ヘロイン」のことを意味します。
MDMAは、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」に該当します。

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自宅にある机の引き出しの中でMDMAを保管する行為は、当然「所持」に該当します。

MDMAの所持については、7年以下の懲役が予定されています。

(MDMAの使用)
MDMAを「施用」(条文上「施用」となっています)する行為も処罰の対象です(麻薬及び向精神薬取締法第27条1項・66条の2第1項)。

「施用」とは、「麻薬を注射、経口、粘膜への塗布、鼻腔からの吸入等の方法によって、自己又は他人の身体に用いること」をいいます。

Aさんが逮捕された被疑事実はMDMAの「所持」ですが、MDMAを使用していた嫌疑もかけられるでしょう。
尿検査などを受けた結果、MDMAの使用を示す反応が検出されれば、MDMAの使用行為についても捜査を受けることになります。
場合によっては、MDMA所持の件とは別に、MDMAを使用した罪について、改めて逮捕されてしまうことも考えられます。
身体拘束が長引かないよう、所持の件と使用の件とを並行して捜査するよう申し入れる必要があるかもしれません。

~犯罪捜査の主体~

犯罪の捜査は、「検察官」、「司法警察職員」が行います。
「検察事務官」は、検察官の指揮を受けて、犯罪の捜査を行うことになっています。

(司法警察職員)
「司法警察職員」は、「一般司法警察職員」と「特別司法警察職員」からなり、麻薬取締官は特別司法警察職員に該当します。
そのため、警察官ではありませんが、薬物事件に関して捜査権限を持ち、被疑者の逮捕、捜索・差押えを行うことができます。
麻薬取締官は厚生労働省の職員で、薬物事件の捜査に特化したノウハウを有しており、中には、薬剤師の資格を持つ麻薬取締官もおられます。

他の特別司法警察職員の例として、「海上保安官」、「労働基準監督官」などがあります。

(検察官)
Aさんは逮捕後、逮捕時から48時間以内に、検察へ身柄が送致されることになるでしょう。
検察へ送致された後は、「検察官」が取調べを行います。
ケースのような事件では、司法警察職員において捜査を行い、捜査が熟した後、検察へ送致する、という手続がとられますが、経済事件、汚職事件などにあっては、最初から検察官が捜査を行うこともあります。
検察官も、捜索・差押え、取調べを行うことができますし、被疑者を逮捕することもできます。
また、捜査の最終段階において、被疑者を起訴するか、不起訴にするかは、検察官が決定しています。
警察官や麻薬取締官は起訴・不起訴の別を決定することはできません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族がMDMA所持の疑いで、麻薬取締官により逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

薬物事件における違法な所持品検査

2020-11-26

薬物事件における違法な所持品検査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~事例~

大阪府茨木市に在住のAさん(22歳)は、禁止薬物の密売人が地域において、大阪府茨木警察署の警察官2人組に突然職務質問をされました。
Aさんの言動を不審に思った警察官に、Aさんが背負っていたリュックサックの中身を見せるように言われましたが、Aさんは頑なに拒否しました。
すると、Aさんは1人の警察官に身動きができないようにされ、もう1人の警察官に勝手にリュックサックを開けられてしまいました。
リュックサックの中には覚せい剤が入っており、Aさんは覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
(これはフィクションです)

~所持品検査~

所持品検査は、職務質問の効果をあげるうえで、必要性や有効性が認められるならば、職務質問に付随する行為として行うことができるとされています。
職務質問については、警察官職務執行法(警職法)で以下の様に規定されています。

警職法 第2条1項 質問
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者~を停止させて質問することができる。
~警察比例の原則~
警察活動には、警察比例の原則というものがあります。
警察比例の原則とは、「警察活動は、必要性に見合った相当なものでなければならない」とする原則のことです。

所持品検査も例外ではなく、警察比例の原則に従わなければなりません。
つまり、所持品検査には「必要性」と「相当性」が求められます。
所持品捜査の「必要性」や「相当性」には、明確な基準はなく、具体的状況の下で判断されるとされています。

~違法な所持品検査~

所持品検査が必要ではなかったり、相当ではなかったりする場合、つまり警察比例の原則に反するような違法な所持品検査であるときは、その後の刑事手続きにも影響が及ぶことがあります。

例えば、違法な所持品検査によって、覚せい剤が発見され、覚せい剤取締法(所持)違反現行犯逮捕された場合、違法に収集された証拠は証拠として認められませんので、その後の刑事裁判では無罪判決が言い渡されることもあるのです。

~薬物事件のときの弁護活動~

覚せい剤取締法違反等の薬物事件で警察の捜査を受ける方のほとんどは、証拠隠滅や、逃走等のおそれを理由に、逮捕や勾留といった身体拘束を受けてしまいます。
そこで、ご家族の方から弁護士に初回接見サービスの依頼をすることをおすすめします。
初回接見とは、弁護士が、逮捕されてしまった方のもとに面会(接見)に行くサービスのことです。
弁護士は、立会人無しで逮捕されてしまった方と話し合うことができるので、事件に関して伝えたいことを正直に話すことができます。
また、今後の取調べで自分に不利なことにならないような対応の仕方を伝えることもできます。

今回の事例では、所持品検査違法となる可能性があります。
弁護士はそのような違法な捜査活動に対応できるスペシャリストです。
逮捕されてしまった方との接見をもとに、所持品検査が違法であったという証拠を集め、釈放するように働きかけることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、薬物事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

大麻取締法違反で執行猶予

2020-11-19

大麻取締法違反事件における執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

【事例】

神戸市兵庫区に住むAさんは、吸引する目的で購入した大麻を車に隠していました。
先日、この車を貸した友人が、神戸市内で交通事故を起こしてしまい、友人は車を放置したまま逃走しました。
車は、事故現場を管轄する兵庫県兵庫警察署に押収されてしまい、その後、友人から車内から大麻が発見、押収されたと聞きました。
Aさんは、出頭を考え、大麻取締法違反などの薬物事件に強い弁護士に相談しました。
(フィクションです。)

【大麻取締法違反】

大麻取締法で、大麻の所持、栽培、譲渡、譲受、輸出入等が禁止されています。
非営利で大麻を所持した場合の罰則規定は「5年以下の懲役」ですが、営利目的で大麻を所持した場合の罰則規定は「10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科」という非常に厳しいものです。

【所持の概念】

今回の事件でAさんの行為は、大麻を所持していたことになるのでしょうか?
大麻取締法でいう「所持」とは、大麻を物理的に把持する必要はなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態であれは足りるとされています。
これは銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)で禁止されている刃物の「携帯」とは異なります。
例えば、コインロッカーに入れて保管していたり、管理権の及ばない他人の建物に隠匿している場合でも「所持」と認定される場合があります。
ただ、所持する物が「大麻」である認識は必要とされています。
例えば、友人から頼まれて預かっていた荷物の中に、大麻が紛れていた場合は、所持する者に大麻を所持している認識がないので、大麻取締法違反でいう「所持」には抵触しない可能性があります。

今回の事件でAさんは、大麻を隠していた車を友人に貸していますが、大麻を実質的に所持していたのはAさんだと考えられるので、大麻取締法における大麻所持違反に抵触するでしょう。
車を運転していた友人について検討すると、Aさんから、車に大麻を隠している事実を知らされていなければ、大麻所持の故意がないので大麻取締法違反に抵触する可能性は極めて低いですが、もしAさんから、この事実を知らされていた場合は、実際の大麻を支配下においているので大麻取締法の所持違反になる可能性が高く、この場合、Aさんと友人は共犯関係になります。

【薬物事件における執行猶予】

大麻に関する罪は、①大麻という信用性の高い物的証拠が存在する、②法律上罰金刑を選択する余地がない、という特徴があります。
そのため、家宅捜索などをきっかけに大麻に関する罪を疑われると、非常に高い確率で逮捕・勾留および起訴に至ると考えられます。
大麻所持を含む薬物事件では、初犯かつ犯情がさほど重くなければ、執行猶予が付される可能性が十分あります。
執行猶予とは、事件の内容や被告人の反省の程度などを考慮して、一定期間刑の執行の全部または一部を猶予する制度です。
刑の全部の執行猶予が行われると、判決が言い渡された直後に刑務所へ収容されるという事態を回避できます。
執行猶予の範囲が一部にとどまっても、刑期が短くなる可能性があると考えればやはり有用です。

期間中に執行猶予が取り消されなければ、その期間が経過した時点で刑の執行を受けることはなくなります。
執行猶予が取り消される事情には、①裁判官の裁量で必要に応じて取り消されるものと、②選択の余地なく必ず取り消されるものがあります。
執行猶予の言い渡し後に気をつけることをピックアップすると、新たに罪を犯さない、保護観察の遵守事項を守る、といったことがあります。
弁護士がついていれば、事件終了後に注意すべき点を含めて様々なアドバイスを受けることができます。
特に、薬物事件は逮捕・勾留や裁判の可能性が高いので、一度は弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に特化した弁護士が、大麻所持をはじめとする薬物事件においても充実した弁護活動を提供いたします。
ご家族などが大麻取締法違反の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

覚醒剤所持の疑いで現行犯逮捕

2020-11-12

今回は、覚醒剤所持の疑いで現行犯逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

Aさんは、京都府福知山市の人気の少ない駐車場に車を停め、覚醒剤を使用していたところ、パトロール中の京都府福知山警察署の警察官から職務質問を受けました。
Aさんは警察官を認めた瞬間に、覚醒剤等をダッシュボードのケースに隠しましたが、隠すところを警察官に見られてしまいました。
警察官が「何か隠さなかったか」と聞くので、Aさんは「何も隠しませんよ」と答えたところ、「じゃあダッシュボードの中みてもいいな、特に見せられないものはないよな」と告げられました。
観念したAさんがダッシュボードのケースを開けたところ、粉末の入ったパケットが発見されました。
簡易検査の結果、粉末が覚醒剤であることが確認されたので、Aさんは覚醒剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~覚醒剤所持罪、及び使用罪について解説~

覚醒剤取締法第41条の2第1項は、覚醒剤をみだりに所持する行為につき、10年以下の懲役を予定しています。

また、Aさんには覚醒剤使用罪の嫌疑もかかるでしょう。
警察署に引致されてから、尿検査を求められることになると思われます。
提出した尿から覚せい剤の使用を示す反応が検出されれば、Aさんの覚醒剤使用行為を立証する有力な証拠となります。
法定の除外事由がないのに、覚醒剤を使用する行為については、10年以下の懲役が予定されています(覚醒剤取締法第41条の3第1項1号)。

~逮捕後の手続~

現行犯逮捕された後は、警察署に引致されます。
その後、犯罪事実の要旨、弁護人選任権について説明を受け、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。

留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。

勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日間、勾留されます。
やむを得ない事由があると認められるときは、最長10日間、勾留が延長されます。

Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。

時に、覚醒剤所持の被疑事実による勾留が満期になった際にAさんを釈放し、改めて覚醒剤使用の疑いで逮捕されてしまう場合もあります。
このような場合は、身体拘束を受ける期間が非常に長くなってしまいます。
Aさんの負担が過大にならないようにするため、覚醒剤所持と、覚醒剤使用の捜査を並行して行うよう求めていく必要があります。

~起訴後の弁護活動~

捜査に違法な点があり、証拠能力を否定されることが見込まれる証拠が存在するなど、特殊な場合を除いては、覚醒剤取締法違反事件は起訴される可能性が高いといえます。
しかし、個人使用目的で覚醒剤を所持し、これを使用していたにすぎない場合には、適切な弁護活動を尽くすことにより、執行猶予付判決を獲得できる可能性があります。

起訴後の弁護活動として、Aさんが再び薬物に手を染めないことをアピールすることが重要となります。
具体的には、
①信頼できる身元引受人を用意し、出廷してもらった上で、証言をしてもらうこと、
②薬物依存の治療プログラムを開始すること(これは保釈を実現していないと困難です)、
③自助グループ(ダルクなど)に参加し、周囲の支援を得ながら、環境の改善や薬物の断絶を図ること
が挙げられます。

~さいごに~

覚醒剤事案は非常に再犯者が多く、事件が終了した後、ふたたび覚醒剤に手を染める方も少なくありません。
薬物から手を断ち切ることができなければ、犯罪を繰り返すことになってしまいますし、自身の健康にも悪影響を与えます。
弁護士や周囲の支援を受けながら、薬物を断ち切るよう努力を続けることが大切と思われます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

薬物事犯捜査の違法性を追及する弁護士

2020-11-05

今回は、覚せい剤取締法違反被疑事件において、捜査の適法性に疑いがある場合の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

覚せい剤取締法違反の前科(覚せい剤の所持・使用)があるAさんは、外出中、警察官から職務質問を受けたため、任意で福岡県八幡西警察署に同行しました。
Aさんは薬物から手を断ち切ることができず、時々覚せい剤を使用するなどしていましたが、職務質問を受けた際には、特に問題となる物件を所持していなかったので、堂々と所持品検査にも応じ、問題のないことが確認されました。

警察官らは、八幡西署において、Aさんに対し、任意で尿を提出するよう求めましたが、数日前に覚せい剤を使用したことを思い出したAさんは、尿の任意提出を拒みました。
Aさんはその後の取調べを拒否し、取調室を出ようとしましたが、警察官らはAさんの肩を掴み、「尿に問題がなければ無事に帰れる」、「あまり拒むようなら、カテーテルで強制的に尿を採取する。痛いし恥ずかしいぞ」などと告げ、5時間にわたり、尿を任意提出するよう説得を続けました。

Aさんは任意提出を拒み続けるのに疲れてしまったため、仕方なく尿を提出しました。
尿からは覚せい剤の使用を示す反応が検出されたため、Aさんは覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~手続の違法性を主張し、不起訴処分や無罪判決の獲得を目指す~

判例によれば、手続に「令状主義の精神を没却するような重大の違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合」においては、証拠の証拠能力が否定されます。
これを、違法収集証拠排除法則といいます。
証拠能力が否定されると、どれほどその証拠に証明力が認められるとしても、裁判で証拠とすることができません。

ケースにおいては、Aさんが覚せい剤を使用したことを立証するため、尿の鑑定書や、Aさんの供述調書が作成されるでしょう。
これらの証拠についても、先行する違法な手続と密接に関連するものと判断された場合、その証拠能力が否定される可能性があります。
この場合には、Aさんの覚せい剤使用行為を立証することができなくなります。
裁判所がAさんの覚せい剤使用行為を認定できなければ、当然、覚せい剤使用行為について有罪とされることはありません。
また、検察官が覚せい剤使用行為を立証できないと判断した場合には、不起訴処分がなされる場合もあります。

~ケースにおいて問題となりうる点~

薬物を使用しているとみられる被疑者を警察署に任意同行し、尿を任意提出するよう求める捜査手法はよく用いられるものです。
しかし、任意捜査として認められる限度を超えて、長時間にわたり説得が続けられた場合や、取調官の言動に強制などの問題があった場合には、手続に違法があったと認められることがあります。

捜査機関による説得が何時間を超えると違法である、という線引きはできません。
被疑者の態度や、嫌疑の程度などを総合考慮し、個別具体的に決定されることになります。

~ケースの場合はどうか?~

Aさんが覚せい剤を使用していると疑われている理由は、①同種前科があること、②尿の任意提出を頑なに拒んでいるからであると思われます。
しかし、先に行われた所持品検査において、覚せい剤やその使用器具が発見されたわけでもなく、Aさんにおいて特異な言動がみられるわけでもありません。
この程度の嫌疑で、明示に取調べを拒む被疑者を5時間も取調室に留め置き、説得行為を続けた点については、違法とされる可能性があります。

また、強制採尿に伴う苦痛の内容を告げるなどした点についても、問題とされる余地があります。
さらに、強制採尿令状が当然に発付されるかのように振る舞い、尿の任意提出を求めている点についても、「令状審査の先取り」として、違法とされる可能性があります(東京地方裁判所平成23年3月15日決定)。

~捜査の適法性に疑問を感じたら、弁護士に相談~

捜査機関は、捜査を行うにあたり、強大な権限を行使することができますが、あらゆる手法が許容されるわけではありません。
適法な捜査がなされるよう監視することも、弁護士の大切な使命です。
捜査の適法性に疑問を感じたら、すぐに弁護士と相談しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚せい剤使用の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

大麻所持事件の解決を目指す弁護士

2020-10-29

今回は、大麻所持の疑いで逮捕されてしまった場合の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

東京都文京区に住むAさんは、大麻と、大麻を吸引する器具とをカバンに入れて街を歩いていたところ、警視庁大塚警察署警察官から職務質問を受けました。
Aさんは大麻の所持行為が発覚するとまずいと思い、職務質問を無視しましたが、警察官により行く手を阻まれ、カバンの中や腕の皮膚を見せるよう求められました。
腕は素直に見せましたが、カバンの開披は頑なに拒んだため、警察官はいよいよ疑いを深め、Aさんは警察官と1時間ほど押し問答を繰り返しました。
Aさんがしぶしぶカバンの中身を見せたところ、大麻様の物件が発見されました。
当該物件が大麻であることが確認された後、Aさんは大麻取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
現在、Aさんには勾留決定がなされています。
どうすればよいのでしょうか。(フィクションです)

~大麻所持罪について~

大麻取締法第24条の2第1項は、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する」としています。
法定の除外事由がないのに、大麻をカバンに入れて携帯する行為は、上記「所持」に該当する可能性が高いでしょう。

~Aさんは今後どうなる?~

(警察段階での手続)
取調べでは、どのようにして大麻を入手したのかについて、詳しく尋ねられるでしょう。
余罪についても追及される可能性が極めて高いです。
もし、尿検査などを受け、覚せい剤の使用を示す反応が検出されれば、覚せい剤取締法違反の疑いもかけられることになります。

Aさんを留置する必要がある場合は、逮捕時から48時間以内に、Aさんを検察へ送致しなければなりません。

(検察段階)
送致後は、検察官もAさんを取り調べます。
検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決定しなければなりません。
ケースの場合、勾留請求がなされる可能性が非常に高いと思われます。

(勾留請求をされた場合)
勾留請求をされると、「勾留質問」のため、裁判所に連れて行かれます。
勾留質問は、裁判官が、Aさんを勾留する要件を満たしているかどうかを判断するために行う手続です。

(勾留決定がなされた場合)
勾留決定が出ると、10日間、留置場や拘置所に入らなければなりません。
やむを得ない事由があると認められると、最長10日間、勾留が延長されます。

(起訴、不起訴が決められる)
検察官は勾留の満期日までに、Aさんを裁判にかけるか否かを決めなければなりません。
もっともケースの事件は、類型的に起訴される可能性が高いといえます。
捜査段階から、起訴された後の弁護活動をも視野に入れる必要があるでしょう。

~保釈の実現及び執行猶予付き判決の獲得を目指す~

薬物事件は、捜査段階において勾留が付きやすく、起訴されやすい傾向にありますが、起訴後に保釈が許される場合が多いことも特徴です。
裁判所が保釈を許す決定をすれば、保釈保証金を納付して、外に出ることができます。

また、Aさんが初犯であれば、適切な弁護活動を尽くすことにより、執行猶予付き判決を獲得できる可能性も十分あります。
そのためには、裁判官において、Aさんが再び薬物犯罪に手を染めないということを納得してもらう必要があります。

要するに、再犯防止策を法廷において十分アピールすることが重要ということです。
薬物依存の治療プログラムを開始する、信頼できる身元引受人を用意し、法廷で証言してもらうなど、様々な方法が考えられます。
信頼できる弁護士に弁護活動を依頼し、有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ケースのような薬物事件の解決実績も豊富です。
ご家族が大麻所持の疑いで逮捕され、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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