埼玉県桶川市の危険ドラッグ事件

2019-03-02

埼玉県桶川市の危険ドラッグ事件

~ケース~

埼玉県桶川市在住の大学生4年生のAさんは就職活動が上手くいかずに悩んでいた。
ある日,大学の友人Xから「この薬を使うと気分がよくなるよ」とある錠剤を薦められた。
Aさんが覚せい剤ではないかと尋ねたところ,Xは「法律で禁止されてない成分を含む奴だから大丈夫だよ」と答えた。
Aさんは不審に思ったが,就職活動が上手くいかず落ち込んでいたので少しでも気を紛らわせようとXから薬を受け取った。
その後,Aさんが深夜に帰宅途中,埼玉県上尾警察署の警察官から職務質問をされAさんは所持品検査に応じた。
その際,Xから貰った薬が発見され,Aさんは医薬品医療機器法違反(指定薬物所持)の疑いで現行犯逮捕された。
大学の卒業試験が数日後に控えていることもあり,警察から連絡を受けたAさんの両親は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談した。
(フィクションです)

~危険ドラッグの規制~

日本は,覚せい剤や麻薬などはそれぞれの規制法で具体的な成分を指定して禁止されています。
例えば,覚せい剤取締法は「覚せい剤」を規制するという法律ではなく「フェニルアミノプロパン,フェニルメチルアミノプロパンおよびその塩類」という覚せい剤の成分を指定して禁止しています。
同じように,「危険ドラッグ」「危険薬物」「脱法ドラッグ」と呼ばれる薬物もそれぞれ具体的に含まれる成分を医薬品医療機器法(薬機法,旧:薬事法)で指定して規制しています(指定薬物)。
薬機法では指定薬物の治療などの医療用途以外の製造,輸入,販売,所持,使用を禁止しており,違反すると3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(薬機法76条の4,第84条26号)。

~違法であることの認識~

日本では特別な規定がある場合を除き,犯罪の故意がある場合に処罰されることが原則となっており(刑法38条),薬機法や覚せい剤取締法などの薬物規制法も同様です。
今回のケースでは「所持」や「使用」の故意が争われることはないでしょう。
Aは少なくとも自分の意思で所持していますので,薬品が指定薬物,つまり違法なものと認識していたかどうかが問題となります。
刑法は一般市民に向けた行為規範ですので,故意として要求する認識は専門家認識ではなく一般市民が認識し得る程度で足りると解されています。
そのため,薬物については,具体的な指定成分が含まれているとの認識は必要なく,違法薬物かもしれないという程度の認識があれば故意が認められます。
Aさんは覚せい剤かもしれないと考えていたので,少なくとも薬物は違法なものかもしれないと認識していたといえるでしょう。
そのため,Aさんは薬機法の規制する指定薬物の所持について故意があったとされると思われます。

~逮捕後の流れ~

薬物事件では,事件発覚後は罪証隠滅などのおそれが高いことから逮捕後,検察官に送致され,勾留請求を経て勾留される場合が多くなっています。
その後,起訴され刑事裁判を受け,初犯であれば執行猶予付きの判決となる事例が多いです。

勾留は犯罪の嫌疑,勾留の理由および勾留の必要性が要件とされています。
今回のようなケースではすでに違法薬物を所持していた事実がありますので犯罪の嫌疑は問題とならないでしょう。
勾留の理由があるとは,住居不定である場合や,罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合をいいます。
しかし,犯罪の嫌疑や勾留の理由が有る場合でも,被疑者を勾留することにより得られる利益とこれにより生ずる不利益とを比較して、権衡を失するときは、被疑者を勾留することは許されないとされています。
Aさんは違法薬物を所持していただけであり,逮捕後に薬物自体は押収されていると考えられますので,罪証隠滅のおそれは少ないといえるでしょう。
また,Aさんは数日後に卒業試験が控えており,勾留されてしまうと卒業試験を受けられず,大学を卒業できなくなってしまいます。

そのため,弁護士は検察官による勾留請求がされないように勾留の必要性がないこと,罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことから勾留要件を満たさない事を主張していきます。
また,勾留によって得られる利益よりAさんが大学を卒業できなくなってしまうという不利益の方が大きいことも主張していきます。
ご両親が身元引受人になることや監視・監督をすること,警察か検察からの出頭命令などには必ず応じるといった内容の上申書も併せて検察官に提出します。
勾留請求がされてしまった場合には,勾留されないために裁判所に勾留に対する準抗告を申し立てることもあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件逮捕され勾留を回避したいとお考えの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。
(埼玉県上尾警察署までの初回接見費用:36,400円)