覚せい剤所持事件の違法捜査

2019-03-12

覚せい剤所持事件の違法捜査

~ケース~

Aさんは覚せい剤の粉末の入ったポリ袋をズボン右ポケットに入れて西東京市内の繁華街を歩いていましたが、薬物中毒者に顕著な特徴が認められるという理由で警察官から職務質問を受けました。
警察官はズボン右ポケットの中身を出すよう求めましたが、Aさんは職務質問に協力せず、自らポケットの中身を出そうとはしませんでした。
長時間にわたる警察官の説得に対してAさんは黙ったままであり、警察官は「いい加減だしてくれよ。ポケットの中見るぞ。いいか」といい、右ズボンポケット内に手を入れ、中身を掴みだすと、覚せい剤と思われる粉末が出てきました。
その後、粉末は試薬による検査で覚せい剤と判明し、Aさんは覚せい剤所持の現行犯として警視庁田無警察署逮捕されてしまいました。
Aさんは任意の職務質問でポケットに手を入れられたことが非常に不満です。
(フィクションです)

~覚せい剤所持罪について~

覚せい剤取締法第41条の2第1項は、「覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者は、10年以下の懲役に処する」としており、比較的重い刑罰が予定されています。

~ケースの警察官の行動に問題はなかったか?~

確かに、職務質問は任意の処分です。
では、職務質問中、所持品検査を所持人の承諾なく行うことは適法でしょうか。
最高裁昭和53年6月20日判決によれば、「警職法二条一項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度において許容される場合があると解すべきである」と判示しており、適法なケースがありうると述べています。
ケースの警察官はAさんの承諾なくポケットを調べていますが、これが捜索に至らず、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、相当性を考慮して適法とされるケースがあるということになります。
ケースに類似した事件として、最高裁昭和53年9月7日判決があります。
そこでは、「警察官が、覚せい剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められる者に対して職務質問中、同人の承諾がないのに、上衣左側内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出した上検査した行為は、一般にプライバシー侵害の程度の高い行為であり、かつ、その態様において捜索に類するものであるから、職務質問に附随する所持品検査の許容限度を逸脱し違法である」と判示されています。

~職務質問に附随する所持品検査が違法だとして、刑事手続にはどのように作用するか~

「違法収集証拠排除法則」により、ポケットからでてきた覚せい剤の「証拠能力」が否定されることがあります。
証拠能力が否定されれば、その証拠は事実認定に用いることができません。
ただし、違法収集証拠として証拠能力が否定されるには、「証拠物の押収等の手続に、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる」ことが必要です。
要するに、単に手続に違法があるというだけで、直ちに証拠能力が否定されるわけではないということです。
上記昭和53年9月7日判決では、ケースに類似した態様の所持品検査をきっかけとして押収した「覚せい剤ようの粉末」につき、①所持品検査として許容される限度をわずかに超えたにすぎないこと、②警察官に令状主義を潜脱しようとする意図があったわけではなかったこと、③所持品検査に際し強制等のされた事跡も認められないことから、証拠能力を肯定しています。
上記ケースでも、覚せい剤の証拠能力は肯定される可能性が高いと思われます。

~捜査に納得いかない場合は、弁護士に相談~

もっとも、適正な手続で捜査が行われるべきことは当然のことです。
証拠能力が肯定、否定されるに関わらず、違法な捜査が行われた場合、弁護人は捜査機関への抗議を通じ、被疑者の利益のために、適正手続の実現に努めます。

ご自身の、またはご家族の覚せい剤所持事件に関して、捜査機関の活動に納得のいかない方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(相談は0120-631-881まで)
(警視庁田無警察署への初回接見費用:36,700円)