覚せい剤営利目的所持と現行犯逮捕

2021-05-27

覚せい剤営利目的所持と現行犯逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは、密売人から覚醒剤を購入した後、帰宅のために車を運転中に信号無視をしてしまい警察官から職務質問を受けました。
その際に、Aさんに覚醒剤使用の前科のあることが発覚し、警察官から所持品検査を求められたAさんは最初こそ拒否していましたが、結局、車のダッシュボードに隠していた密売人から購入した覚醒剤が見つかってしまいました。
その場で、覚醒剤の簡易鑑定が行われ陽性反応を示したことから、Aさんは覚醒剤所持の容疑で現行犯逮捕されてしました。
(フィクションです)

~覚せい剤の営利目的所持~

覚せい剤取締法では、大きく分けて所持、譲渡、譲受、使用、輸出入、製造を禁止しており、それぞれの違反形態は、非営利目的と営利目的とに分かれています。
そして営利目的には加重処罰規定を設けているのです。
このような加重処罰規定が設けられたのは、財産上の利得を目当てとして犯罪を行うことが道義的に厳しく非難に値するというだけでなく、一般にその行為が反復され、覚せい剤の濫用を助長・増進させ国民の保健衛生上の危害を増大させる危険性が高いからです。
営利の目的は、犯人が自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合を意味します。
警察等の捜査当局は、押収した覚せい剤の量や、実際に覚せい剤を買った人物がいるかどうか(密売履歴)、覚せい剤を密売して得た財産等から営利目的を立証するのですが、単に覚せい剤を有償で譲り渡すことだけで営利目的と認められるわけではありません。
営利目的の覚せい剤所持罪は、非営利目的の単純な所持罪に比べて非常に重たい法定刑が定められています。

~現行犯逮捕と捜索・差し押さえ~

現行犯逮捕については、刑事訴訟法212条1項、2項、213条に規定されていますが、このうち純粋な現行犯は1項を根拠とします。純粋なとは、現行犯人、つまり現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者をいいます。

刑事訴訟法212条1項
 現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。

刑事訴訟法213条
 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

また、現行犯逮捕に引き続き、逮捕の現場で捜索・差し押さえが行われることもあります。
本来、人・物の発見(捜索),物の取得(差押え)は,個人のプライバシー侵害のおそれが大きいことから,裁判官が予め発する令状を取得して行わなければなりません(令状主義)。ところが、裁判官に令状発布を求めるには時間がかかります。もしかしたら、その間に大事な証拠を隠滅されてしまうかもしれません。そこで、刑事訴訟法は、被疑者を逮捕した場合において、その場で、令状なしの捜索、差押を認めているのです。

刑事訴訟法220条1項 
 (略)司法警察職員は,(略)被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは,左の処分をすることができる。(略)。

2号 逮捕の現場で差押,捜索又は検証をすること。

薬物事件においては、捜索現場で捜査機関とトラブルことがよくあり、その際の状況などが裁判の争点に発展することがあります。薬物事件でお困りの際は、弁護士へお気軽にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。覚せい剤事件などの薬物事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。